【シリーズ:健康経営と大学連携】江島ゼミ生、マイプロジェクトで働きがい、生きがいを見つめる。(かちぞうゼミ2023 第2回)

大阪経済大学経営学部の江島由裕ゼミとタッグを組んで実施しているかちぞうゼミ(※1)のPBL活動(PBL:Problem Based Learning)。テーマは『学生とIKIGAI企業で創る新しい就活のカタチ』-学生とIKIGAI企業の交流&就活プラットフォームづくり- 。今回は自分の働きがい・生きがいを知るために役立つマイプロシートの作成にゼミ生たちが挑みます。

〔江島ゼミ生〕

大林由依 

俵美愛 

野村果音 

水元紗理 

吉岡尚哉

〔IKIGAI WORKS〕

熊倉 利和(健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表取締役)

須子 善彦(マイプロジェクト代表取締役/IKIGAI WORKS取締役)

1.マイプロシートで自分の価値観を知る

今回のプロジェクトで重要な役割を果たすものの一つが「マイプロジェクト」という手法。まずIKIGAI WORKSの須子からマイプロジェクトについての説明がありました。

須子:IKIGAI WORKSは働きがい、生きがいという価値観を世の中に広めていくことを目的に設立されたベンチャーです。その働きがい、生きがいを探求していく手法の一つがマイプロジェクト(マイプロ)。マイプロジェクトは、その名の通り自分自身の心と対話し、自分が本当にしたいこと、感じていることを知った上で「私のプロジェクト」を創り出していくというもの。

このマイプロジェクトは、みなさんが自分にはどんな仕事、会社が合うのかを理解する上で役立ちますが、ほかの人の働きがい、生きがいを知る時にも使えます。

例えば、これからみなさんは、ホワイト企業の経営者にインタビューしていきますが、その経営者にはどんな原体験があって今の事業をしているのか。なぜブラック企業のように従業員を利用し、こき使うのではなく、一人ひとりを大切にする経営をしているのか。そこにはどんな想い、価値観、哲学があるのか。そういったことを可視化するためのツールでもあります。

では、具体的にマイプロジェクトをどう行っていくかというと、マイプロシートを使います。マイプロシートは「マイプロMe編」と「Project編」に分かれており、マイプロMe編では自分の人生を振り返りながら、どんな体験をし、それが自分の中でどういう価値観を醸成していったのか。Project編はこれから自分がどんなことをしていきたいかということを書き込んでいきます。

マイプロシートは、起業家を支援する際などにも使われています。例えば、その人がやりたいと思っているプロジェクト(ビジネスプランの前の段階をプロジェクトと呼ぶ)を書いてもらうのですが、大事なのは「私がなぜその事業をやりたいか」と自分を主語にすること。

普通のビジネスプランの場合、「その事業をやることで誰の役に立つのか」「市場のニーズはあるのか」「競合の状況はどうなのか」といった外部要因を含め、実現の可能性が具体的に問われます。ですが、マイプロジェクトはその前の自分の気持ちや価値観を確かめる段階のためのものです。

最初からマイプロシートの項目全部を埋められなくても大丈夫です。みんなの質問を受けたりする中で、だんだん埋まってくるという面白い仕組みになっていますから。

2.ゼミ生自身がマイプロシートを作成

自分自身のマイプロシートを作成することになった江島ゼミ生。その中の一人、吉岡尚弥が自分のマイプロシートを発表してくれました。

吉岡尚哉:まず「マイプロMe編」ですが、生まれて20年間、だんじり祭りで有名な大阪の平野区で暮らしています。子供の頃は大変な泣き虫。親が共働きでしたから、母親が出勤する時、マンションの窓を開けて「バイバイ!」と大声で泣き叫んでいました。小学生の時は生徒会の活動にも積極的に参加していましたが、中学生になるとみんなをリードしたり、学校の中心になったりするのはもういいやと途端に熱が冷めました。

高校時代は勉強にもそれほど力を入れず、受験にも失敗し、浪人生活を経て大学に入学。最初はコロナ禍でしたから、授業もオンラインで友達もできなかった。時間があるので宅建の資格を取ろうと考えましたが、勉強が苦手なので案の定、不合格。それもあり、自分はやはり勉強より行動するタイプなのではないかと、ゼミの活動にも力を入れ、「ZEMI-1グランプリ(プレゼンテーションの力を競い合うゼミ対抗イベント)」の実行委員長などを務めています。

みんなが知らない自慢ということでは、サックスや空手、絵画のほか、書道を小学校の低学年の頃から始めて今も続けています。母と一緒に通っていて辞めさせてくれません(笑)。

次に「Project編」ですが、これは「Sony Musicに入社する」のみ。なぜSony Musicかというと乃木坂46が大好きなので、乃木坂のマネージャーになるというところまでイメージしています。それとライブやフェスに行ったりと音楽そのものが好き。ですから仮にSony Musicでなくても、音楽関係の仕事に就きたい。落ち込んだ時、人を信じられなくなった時に寄り添えるような音楽を作ったり、好きなアーティストの話ができる場を提供したいと考えています。

須子:書道に今もお母さんと通っているというのは印象的です。「辞めさせてくれない」と言いつつも尚哉自身、満更でもなさそう。親子関係がとても良好なのかなと勝手に推測しました。家族の仲が良い人はちょうどいい自己肯定感があるし、周りの人との関係もよくなる。実際、マイプロシートにも「誰とでも分け隔てなく話せる」と書いているね。

それって尚哉にとってとても大きな財産だと思う。勉強は苦手と言っていたけれど、今は学校の勉強を全部網羅するというより、学びたいことを学んでいくという時代になってきている。特にAIが普及するとクリエイティビティや協働力などがより重要になってくる。その点、誰とでも分け隔てなく本音で話せたり、相手からの信頼を得られるという武器を尚哉は持っている。その根本にあるのは、お母さんとの良好な関係かもしれないね。

熊倉:とても素敵な発表をありがとう。尚哉の話を聞いていて「マイプロMe編」「Project編」も一つの共通項で括ることができると感じました。それは「推し活で勝ちパターンを見つけている男」。絵や書道といったアートの才能もあり、何もないところから自分を表現する場も持っている。

もしかしたら、小さい頃、両親が共働きで寂しい思いをした体験が「自分が頑張らないといけない」「周りに迷惑をかけてはいけない」という気持ちを生み、それがリーダーシップであったり、人と人を繋げる役割をしようとする原体験になっているのかもしれないね。尚哉の根本にあるのは、人が好きだということ。これからもそれを大切にしていってほしい。

3.マイモノサシを作ろう

ゼミ生たちは、今回のプロジェクトで『交流プラットフォームのコミュニケーション設計』、『働き方・生き方フェス』(※2)、『学生によるIKIGAI企業ランキング(モノサシづくり)』という三つのテーマに挑んでいます(詳しくは前回の記事をご覧ください)。

熊倉:次にみんなで集まるまでに各自で「働きがい、生きがいを感じられるのはこんな企業だ」という指標であるマイモノサシをまとめてほしい。それを実際、ホワイト企業の経営者へのインタビューでぶつけていくことになる。マイモノサシを作って自分の中に基準が生まれると、「この経営者にこんなことを聞いてみたい」ということがどんどん出てくると思うよ。

【取材後記】

ホワイト企業へのインタビューをする前に、マイプロシートで自分自身が本当に大切にしている価値観やこれからやっていきたいことを見つめた江島ゼミ生たち。今回は吉岡尚哉の発表しかご紹介できませんでしたが、ほかのゼミ生も熊倉、須子の意見なども聞き、自分ではわからなかった可能性に気づき始めているようでした。

これから江島ゼミ生たちは、インタビューや交流イベントを通じ、実際にホワイト企業の経営者などと触れ合っていきます。その中でゼミ生はどんな体験をし、どう成長していくのでしょうか。次回以降の記事でご紹介していきます。

(※1)産学連携かちぞうzemiは、一般社団法人そばくりラボ主催の「かちぞう企画」の一つで、産学連携で価値創造にチャレンジする実践的なPBL活動(PBL:Problem Based Learning)。より良い社会の構築を目指して価値創造するための実践的な調査研究活動に、学生がチーム単位で半年間かけて取り組む。

(※2)第一回『働き方・生き方フェス』は2020年9月15日に開催。『ニューノーマルで変わる働き方、変わらない働き方』をテーマに健康経営のトップランナーはもちろん、脳科学者の茂木健一郎氏をはじめ、各分野の第一線で活躍する方々が集結。3つのスペシャルステージ、9つのラーニングステージ、6つのソリューションステージが繰り広げられた。第二回『働き方・生き方フェス』は2024年4月開催予定。

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