まさにお手本!ビックカメラの健康経営の進め方

1.健康経営は採用でも強力なアピールに

――ビックカメラのことを知らない人はいないと思いますが、改めて会社や事業について教え
ていただけますか?

根本さん:はい。一般的には家電を中心とした小売業というイメージが強いと思います。しかし、お客様に喜んで頂く為に、私たちが目指しているのは専門店の集合体なんです。例えば、テレビ、医薬品、化粧品、お酒、メガネ・コンタクト、スポーツ用品、美容などのそれぞれの専門店が集まり、生活に必要なものはここで何でも揃うという場所にしたい。そのために、取扱商品やサービスを増やしています。

――なるほど。実は、コジマ、ソフマップもビックカメラのグループ企業なんですよね。

根本さん:ええ。ビックカメラは都市の駅近くに店舗が多く、一方でコジマは郊外に店舗が多い。また、ソフマップはデジタル家電などの買取業務や中古商品販売のほか、パソコンなどのサポート業務などが強い。3社それぞれの特徴を活かし、補いあって事業を展開しています。さらに、ユニクロ様とのビックロ、楽天様との楽天ビックなど他社とのコラボも積極的に行っています。

――とても幅広く展開なさっているのですね。今、店舗数、従業員数はどれくらいですか?

根本さん:ビックカメラ、コジマ、ソフマップを合わせると全体で200を超える店舗数となります。社員数は、ビックカメラだけで7.000人弱で、コジマ、ソフマップと合わせると全体で14,000人くらいになります。

――ビックカメラは、健康経営優良法人2019(ホワイト500)に認定されました。取り組むきっかけについてご紹介いただけませんか?

根本さん:もともと健康への意識は高い会社ではあったと思います。と言うのも、私はずっと店舗で働いていたのですが、人事部に配属になった時にまず感じたのが、社長をはじめとした経営層が、従業員の健康を非常に気にかけているということ。

また、今後従業員の平均年齢も高くなって行く事も考えますと今後更に、従業員の健康をいかに守り、元気に働いてもらうかが今後の大きなテーマになっていくと思っています。従業員が更にいきいきと働く事が出来れば、自然と生産性も高まり、今以上にお客様にも喜んで頂く事が出来る為健康経営を本格的に推進していこうとなったんです。

――なるほど。もともと経営層が従業員の健康を気にかけていたところに、平均年齢も上がり、より健康経営に取り組む必要性が高まっていったということですね。

根本さん:おっしゃる通りです。それと採用面もあります。人事で採用の仕事をしていますと、最近の学生さんの会社選びのポイントが変わってきたなと肌で感じています。「自分が長く働ける環境があるかどうか」ということを見極めて会社選びをされているようです。

そこで、ビックカメラとしても、健康経営にしっかり取り組み、安心してずっと働いていける会社なんだということを、特に学生の皆さん知っていただきたいと思っています。

――根本さんご自身も、人事部内の「いきいき働く推進チーム」のリーダーを務めておられますが、ダイバーシティ推進室の立ち上げにも携わったとお聞きしています。

根本さん: はい。店舗から人事部に異動をして、まずは女性の活躍推進に着手を致しました。女性が働きやすい職場は男性にも働きやすい職場であると考え、まずは子育てをしながらでも働きやすい環境を整える事に着手を致しました。結果、2018年に「プラチナくるみん」も取得することができました。

また、保育園開園に携わるタイミングでダイバーシティ推進室を立ち上げています。
ダイバーシティ推進室は、女性だけでなく、多様性を重視し生かす事で企業や個人の成長に繋げていく為の部署です。

さらに労働組合でもダイバーシティ委員会が設置されていた為、会社や労働組合双方でダイバーシティを推進しているというメッセージが伝わりやすいと考えております。

2.専門家の協力でスムーズに申請

――具体的には何年前くらいから、ホワイト500認定の準備を進めてきましたか?

根本さん:2016年、2017年の頃には、心の中で密かに「ぜひとも取得したい!!」と思っておりました。ただ、具体的にはどうすればいいか、イメージできない部分がありました。それに、健康経営は健康保険組合との協働体制も必要となりますし、ハードルもいくつかありそうで、一朝一夕にはできないなとも思っていました。

そんな状況の中、推進の一番大きなきっかけとなったのが、毎年実施するストレスチェックを㈱FiNC Technologies様にお願いしたこと。先方とストレスチェックの話をしている中で、健康経営にとても詳しい企業様であることがわかり、「じゃあ、相談に乗っていただけませんか」と、ご相談をさせて頂きました。そして、ストレスチェックと健康経営の打ち合わせを両軸で行うようになりました。

㈱FiNC Technologiesに健康経営についてのご相談をしていくうち、ホワイト500の認定が現実に見えてきました。途中で疑問点が出てきても、その都度㈱FiNC Technologiesにわかりやすく教えていただけたので、比較的スムーズに申請までたどり着く事が出来ました。

――ホワイト500の申請をする、つまり、健康経営を推し進めていくことを社内にどうやって伝えていきましたか?

根本さん:各組織や部署の長全員が参加する、ストレスチェックの報告会で、
「ホワイト500の認定を狙います。健康宣言します!」と発表をしました
。自信を持ってそう言えたのも、認定が受けられそうだという手応えがあったこと。そして、「この時期までに、これとこれをクリアしておく必要がある」といったスケジュール感が明確に見えていたことが大きかったです。

――ホワイト500の認定を受けるには、クリアしなければならないいくつかの項目がありますね。最初の段階ではどれくらいクリアしていましたか?

根本さん:ある程度できていましたが、㈱FiNC Technologies様から専門的な目で見てもらうと、やはり不足している点が出てきました。そこから、健康診断管理システムを導入したり、社内保健師も新たに雇用したんです。

私は休職者の復職支援なども担当しており、店舗で働いている人たちから様々な相談を受けるのですが、私自身、専門的な知識が不足していて、その都度、産業医の先生に確認をとる必要がありました。そこに保健師の方に入ってもらうことによって、きめ細やかなケアをタイムリーにできるようになりました。それに加え、保健師の方を新たに雇用したのは、健康診断の結果も以前より踏み込んでチェックし、データを活用していきたいという狙いもありました。

3.家族と楽しめる健康イベントを開催

――では、健康経営で具体的にどんなことをされているのかを教えていただけますか。

根本さん:社員に対して、給与とは別に健康増進活動に充ててもらうことを目的にした「健康支援手当」を支給しました。例えば、禁煙外来の費用に当ててもいいですし、フィットネス関連商品や運動器具の購入をするのでも、用途は自由です。特に指定はせず、社員の健康増進のために使ってもらっています。この手当がきっかけで、ウェアラブルウォッチやフィットネスグッズを購入する社員も多く、効果があった取り組みのひとつです。

また、従業員が自由に参加できる『いきいきイベント』も最近始めました。従業員には、ヨガやストレッチ、従業員のお子様には体操教室やストラックアウトなどのメニューを用意して、家族で楽しめるイベントにしています。
ビックカメラは、ソフトボールを始め、スポーツのチームを持っているので、選手たちも参加してくれています。関連部署のひとつ、ドラッグ事業部も協力してくれて、健康に良いお菓子などを、イベント参加者へのお土産として薬剤師に持ってきてもらったりもしています。お祭りの屋台みたいなイメージで輪投げなどもありますし、大人も子供も楽しめるイベントになっています。労働組合が主催するバレーボール、バスケットなどのスポーツイベントも、年に数回開かれています。

――楽しみながら運動ができるイベントが盛り沢山ですね。店舗では何か工夫をされていますか?

根本さん:総務の担当者を中心に休憩スペースの充実にも力を入れています。リクライニングチェアを置いたり、個室ブースや仮眠スペースを作ったりした店舗もあります。店舗それぞれに工夫を凝らし、従業員が休憩時間にゆったりと過ごせる環境を整えています。

また、健康に関する知識が豊富な薬剤師などが講師となり、睡眠など健康に関する勉強会も一番大きな店舗を会場にして開いています。

先に申し上げた健康イベントも同様ですが、従業員満足度の向上や健康増進に関しては人事部だけでなく、部署を越えて連携して行う事も多いです。
関連する専門部署の知恵や力を合わせ、取り組みを具体化しています。

――そこまでされているんですね。今後、どんなことに取り組んでいく予定ですか?

根本さん:今、社内の薬剤師の方からの提案で食事についての取り組みも始めています。薬剤師さんの所属するドラッグ事業部では、塩分、カロリー控えめでコストも抑えた電子レンジで温めてすぐに食べられるカレーやご飯を販売していますが、それを自社の食堂(一部店舗にて実施)にも置くというもの。

ビックカメラは男性従業員が多いので、食事も塩分や油分の多いものを選びがち。ラーメンなどが人気メニューとなっていますが、それよりもっとヘルシーなものを食べてほしいという点が狙いです。多くの店舗には食堂が併設されていますが、ない店舗もありますので、ヘルシーなお弁当の導入も考えています。

4.データ活用でリスクの高い人に早期介入

――先ほども少し出ましたが、データ活用についてもう少し詳しくお聞きできますか?

根本さん:健康診断のデータ管理システムの導入を致しました。今も健康診断の後、再検査の促しはおこなっているのですが、特に若手社員などは再検査になってもなかなか受診しない人がいます。実際、病気になった従業員が、要再検査となっているのに実は受診していなかったというケースがあって、その反省も込めて、取り組んでいるところです。

今の健康診断でも管理は行っておりましたが、今迄よりも更に細かく把握し、それぞれの項目ごとにもっとしっかり精査できるようにしたい。特にリスクの高めの人に素早くアプローチして、保健師の方との面談を受けてもらうようにしていきたい。それによって予防できることもたくさんあると思っています。

5.一丸となって壁を乗り越えていく

――健康経営を推進していく上で課題や壁にぶつかることはありませんか?

根本さん:そうですね。今、毎月22日はスワンスワン(吸わん吸わん)ということで、ワンデー禁煙日にしています。本当は1日だけでなく、もう少し増やしていきたい思いもあるのですが、簡単には進まない点もございます。

ただ、一緒になって健康経営を進めている労働組合がとても協力的。その中のメンバーの一人が、「じゃあ、自分がお手本となって禁煙します」と言ってくれ、ヘビースモーカーだったのですが、すっぱりと止めました。禁煙日記も書いてくれ、ホームページや社内報にも禁煙成功者として登場してもらっています。

――それは素晴らしい。禁煙も今後、浸透していきそうですね。

根本さん:はい。ビックカメラの禁煙で特徴的なのは、健康経営宣言をした直後くらいに、ビックカメラの大多数が所属している営業担当のリーダー達がこぞって止めたこと。まず部署の長が止めると、店長たちも止めて、店舗のスタッフも止めるメンバーが増えたという流れができました。当社の事業は店舗が要。従業員の多くが営業です。ですから、全社的にも大きな影響が出ました。今年の6月に実態調査したところ、喫煙者数は約20%でした。禁煙の観点でも、健康増進の為に進めて参ります。

――健康経営を推進してみてどのような変化が現れましたか?

根本さん:メンバーの体調が優れない時などは、店長や組織長から、私たち『いきいき働く推進室チーム』にすぐに相談が来るようになりました。私たちからも、体調不良などで休職する人が出た場合、復職までの流れをどうやってサポートしていくかといったことを、会議などで店舗の人たちに話す機会を増やしています。

ストレスチェックに関しては、組織分析の結果を各事業所で精査してもらい、安全衛生委員会で原因と対策を話し合ってもらっています。私たちもできるだけ参加し、「ストレスの原因となっているものは何か?」などについて一緒に考えるとともに、本部への要望があれば、それを各部署に伝え改善のお願いをする流れにしています。

それもあってか、ストレスチェックの結果も改善され、少しホッとしているところです。ですが、予防に対する意識はまだ十分とは言えず、そこは課題。私たちも店舗のメンバーの声を吸い上げ、働き易い職場環境にする為に必要な事があれば、それを各部署に伝え改善の打診を行っています。ただ、従業員のストレスを取り除くために各部署を動かし、問題を解決していくのには一朝一夕にいかない事もあります。でも、愚直に取り組んでいきたいですね。

――健保、労組との密な協力体制が築けているところも素晴らしいですね。

根本さん:ありがとうございます。健保とは普段から頻繁に顔を合わせていますし、「健診の受診率をどう上げていくか」「特定保健指導をどうしていくか」といった基本的なことについては、2ヶ月に1回くらいの割合で打ち合わせの場を設けています。

労組とは、まさに二人三脚で健康経営やダイバーシティ推進に取り組んでいます。月1回、私たち『いきいき働く推進チーム』、労組、ソフトボールなどの選手たちが所属するスポーツコミュニティ室、ドラッグ事業部にも加わってもらってミーティングを開いています。そこでは、「これまで取り組んでいなかったことにチャレンジしよう!」とアイデア出しをおこない、いきいきイベント、女性活躍のセミナーの内容なども決めていきます。

――コジマ、ソフマップといったグループ企業との連携はどうですか?

根本さん:はい。グループ会社とも連携が強化されています。ソフマップとはもともと健保組合が同じである為、一緒に進めて参りました。
また、コジマも女性活躍推進や健康促進を積極的に行う為の部署を立ち上げており、協働で実施可能な取り組みは一体となって進めています。
直近では、今後定期開催予定の女性管理職向け研修をグループ3社で実施したり、労働組合との協働体制で行っている各種セミナーもグループ会社も参加したり、運営側で協力していただいています。
健康経営の観点では、先に申し上げた健康診断後のフォローは保健師の方中心にグループ3社で行っています。
また、健康増進イベントに関しましてもコジマと一緒に実施を致しました。

ビックカメラグループは、多くの組織、企業がございます。
1人、また人事部単体では中々実現が困難な事であっても、同じ目的に向かって、部署やグループ会社、組合と会社等々、様々な枠を越え、皆で協力し合えば実現可能である事を学んで来ました。
今後におきましても、多くの方達と力を合わせ、賛同していただける方々に感謝をしながら進め、従業員がいきいき働く会社を維持して参ります。

【インタビュー後記】
健康経営優良法人2019(ホワイト500)の認定を受けるなど、健康経営を積極的に推進するビックカメラ。今回は、『いきいき働く推進室チーム』の根本さんにご登場いただき、具体的にどうやって推進していったかを聞ける大変貴重なインタビューとなりました。

働く人たちの年齢が高くなるにつれて、病気になる人も増えていく。そういう状況の中、従業員に元気に働いてもらうことで生産性も高まる。健康で長く働ける会社であることをアピールすることで採用面でのメリットも期待できると始まった健康経営。これはまさに多くの日本企業が直面する課題でもあります。

その中で、専門家の力を借りながら、家族ぐるみで楽しく健康になれるイベントであったり、店舗での休憩室や食事のサポートも重視。ストレスチェックでも、現場で働く人の声を直接吸い上げ、問題解決のために真摯に取り組んでいる姿勢に感銘を受けました。さらに、データヘルスを導入し、病気のリスクの高い人に早めにアプローチすることにも着手しようとしています。健保はもちろん、労働組合、スポーツコミュニティ室、ドラッグ事業部など立場の違う人たちが一致協力している姿も素晴らしい。まさに、健康経営のお手本のような取り組みをされています。

<企業データ>

会社名:株式会社ビックカメラ
事業内容:カメラ、ビジュアル製品、オーディオ製品、パソコン、OA機器、携帯電話、家電製品、時計、ゲーム、メガネ・コンタクト、医薬品、玩具、スポーツ用品、寝具、酒類等の販売
本社所在地:東京都豊島区高田3-23-23
従業員数:約14,000名(グループ全体)