【シリーズ:健康経営と大学連携】松本ゼミ生、最終報告会で成果を堂々とプレゼン(熊倉教室④)
かちぞうzemi(※)の一環として実施されている健康経営の広場と関西学院大学の松本ゼミ生とのPBL活動(PBL:Problem Based Learning)。健康経営に取り組む企業へのインタビューなどを通じ、「働きやすさ、働きがいの実現という就職観の醸成」「学生と健康経営実践企業の交流の仕掛けづくり」「就職後の仕事観のミスマッチ防止」などを探っていくものです。今回は、半年間の活動の成果を発表する最終報告会の様子をお伝えします。
〔松本ゼミ生〕
追矢裕子
草野瑞季
小宮谷純怜
谷本彩葉
中野太陽
中山佳亮
念治明美
宮武駿
八幡 大
吉道亜樹
〔講師〕
熊倉 利和(健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表取締役)
目次
1.いよいよプレゼンスタート
2023年3月21日(火)、関西大学で開かれた『第 8 回産学連携かちぞうzemi 最終報告会』。各ゼミの学生チームとゼミの担当教授、パートナー組織、来賓企業、大学教授など合わせて100名以上が集まりました。
11チームが参加する中、松本ゼミ×IKIGAI WORKS(メディアサイト『健康経営の広場』運営会社)は2番目に登場。壇上に立った松本ゼミ生は、まず今回のテーマである『ホワイト企業との交流による就職価値観醸成プログラム』の目的やターゲットについて説明します。
「今回のPBL活動で自分達が体験した『ホワイト企業との交流による就職価値観醸成プログラム』を今後、教育プログラムとして他の人たちにも活用してほしいと考えています。その際、メインターゲットとなるのは健康経営に興味がある企業、そして大学生です」
大学生の中でも、特にマーケティングや組織論系のゼミ生が対象になるとのこと。なぜマーケティングかというと、健康経営は生産性の向上や人財採用への好影響などのメリットをもたらし、そのメリットを享受するために大切になるのがPR活動であるといった理由からです。また、健康経営を学ぶことは企業経営を学ぶことでもあり、組織論系の学生にとってもとても意義のあることだと言います。
「特に重要なのは、どの大学でも実現可能なプログラムであるということです」と松本ゼミ生は聴衆に訴えかけます。
次に松本ゼミ生たちは、自分達が受けた教育プログラムを振り返りました。今回の『ホワイト企業との交流による就職価値観醸成プログラム』は、導入講義 → 企業調査 → 交流イベント → 自己分析というステップで進んでいきました。
導入講義では、『健康経営の広場』編集長である熊倉から「健康経営と働きがいの関係」「求められている企業選びの軸とは?」「Z世代の就職観や健康経営に対する認知度の向上」などについて学びました。
「この導入講義を受ける前までは、健康経営って何? 体を鍛えるもの? という認識でいましたが、導入講義によって健康経営とは“攻め”の取り組みであると理解することができました」と松本ゼミ生。
健康経営とは、身体だけでなく“心身”の健康に寄与するものである。企業側にも従業員側にも様々なメリットがあり、それは就活生にも魅力的に映るものであるとのことでした。
導入講義の後に松本ゼミ生が挑んだのが、企業調査と交流イベント。健康経営を実践するホワイト企業へのインタビューや座談会などを通じて「健康経営を始めたきっかけ」「取り組み事例」「取り組みの効果」などについて尋ねたり、意見交換を重ねていきました。
これらの活動を通じ、インターネット上の情報では知り得ないような生の声が聞けたとのこと。例えば、各企業特有の取り組み内容はもちろん、「なぜ人を大切にする取り組みをしているか」といった経営者や社員の方の熱い想いを知ることができたことが大きな収穫であったと言います。
2.学生に訪れた就職観の変化
企業インタビュー、座談会と並行するように自己分析(自分軸を探求するためのダイアログ)を体験した松本ゼミ生。
この自己分析は、ゼミ生が「子供の頃から熱中していたことは?」「どんな社会人になりたいか?」「ホワイト企業をインタビューして何を思ったか?」という質問に答えながら、自分が本当にやりたいこと、仕事に求めるものは何かを考えていくもの。何をすることが生きがいになるのかというのは、子供の頃から熱中してきたこととリンクしており、そこを掘り下げることで、自分が本当にやりたい仕事、働きたい会社も自ずと見えてくるとのことでした。
これらの『ホワイト企業との交流による就職価値観醸成プログラム』を通じ、松本ゼミ生たちは何を学んだのでしょうか。
一つには、企業選びの軸ができたこと。規模や知名度、安定性で選ぶというこれまでの価値観だけでなく、本当にワクワクした気持ちになれるかどうかという自分軸で企業や仕事を選ぶ就職観です。
つまり、健康経営についての理解が深まるだけでなく、近い将来、社会に出る身として、企業の知名度や規模だけでなく、働きやすさ、働きがい、生きがいという価値観での就職を考えるきっかけになったと言うのです。
「これまでの就活では、企業の知名度や収入といったことに縛られていましたが、社会的使命が大きい仕事であるかどうか、自分の専門性を活かせるか、裁量権があるかなど、自分がやりたいことを実現できるかどうかが会社選びでも重要になっていきました」と松本ゼミ生。
今回のプログラムを体験することで、松本ゼミ生は就活という短期的なものだけでなく、長期的にキャリアを描けるようになったと言います。例えば、「いつか起業したい」という希望を持っていれば、起業を念頭に置いたファーストキャリアの設計ができるようになります。「やりたい仕事がずっと同じとは限らない」と転職も視野に入れた就職やキャリア形成も柔軟にイメージできるようになったと言います。
最後に、松本ゼミ生たちは今後の展望とこの教育プログラムを引き継いてくれる学生たちへメッセージを送ります。
「自分達が体験したこの教育プログラムは、健康経営から就職価値観を発見するとともに、自己理解を深められるプログラムになっています。今の就活は知名度や安定性などを重視し、選択肢が大企業中心になっているように感じられます。この教育プログラムを活用し、私たちの次の代や他大学のみなさんにも自分軸を持った就活やキャリア形成を考えていただけたら幸いです」
3.健康経営を広めていくために
松本ゼミ生によるプレゼンが終了。質疑応答に入ります。
質問者:素晴らしいプレゼンありがとうございました。私は個人的に、健康経営は導入しやすい企業、しにくい企業があると感じていますが、企業インタビューなどを通じ、企業規模や業種などで傾向があったかどうか分析結果が出ているのであれば教えてください。
松本ゼミ生:そうですね。規模で言えば、小規模のボトムアップ企業は、社員が意見を言いやすいですし、経営者も一人一人の社員と密接に向き合っているため、様々な健康施策に取り組みやすいと感じました。
質問者:この教育プログラムには、自己分析が入っているところが素晴らしいですね。自分のことを分析するというのは、社会人にとってもこれからとても重要になると思いますし、今回の教育プログラムは、学生さんのみならず、社会人にとっても役立つものだと感じました。そのためにも健康経営の考え方を広げていく必要がありますね。
松本ゼミ生:はい。私たちも健康経営を広めるためにどうすればいいかと考えながら、今回の教育プログラムを実践してきました。この教育プログラムは健康経営を広めるためにも役立つものですから、大学や企業の皆さんにご活用いただければとても光栄です」
全11チームのプレゼンが無事終了。松本ゼミ×IKIGAI WORKSは惜しくも入賞こそ逃しましたが、聴衆からも高い評価を得て、充実感と確かな手応えを感じているようでした。
【取材後記】
半年間に渡る健康経営の広場と関西学院大学の松本ゼミ生とのPBL活動も無事終了。今回の最終報告会でも、松本ゼミ生たちは、健康経営や働きがい、生きがいという価値観を学生や社会に広めていくパイオニア的な役割を見事に果たしてくれましたし、PBL活動中の積極的な姿勢や成長するスピードにも驚かされるばかりでした。今回の松本ゼミ生の活躍がモデルケースとなり、次のゼミ生や他大学の学生にも、健康経営の考え方や自分軸を大切にした就職感の醸成というバトンが引き継がれていくことでしょう。
(※)産学連携かちぞうzemiは、一般社団法人そばくりラボ主催の「かちぞう企画」の一つで、産学連携で価値創造にチャレンジする実践的なPBL活動(PBL:Problem Based Learning)。より良い社会の構築を目指して価値創造するための実践的な調査研究活動に、学生がチーム単位で半年間かけて取り組む。