【エーオーエーアオバ健康経営セミナー】健康診断だけでは不十分?!  企業が取り組むべき“予防医療”とは?

株式会社エーオーエーアオバが主催する健康セミナーに、経営者を中心に約20名が参加しました。講師を務めたのは、予防医療の第一人者であり医学博士の金城実氏。セミナーでは、企業が予防医療を取り入れる意義や、健康経営を成功に導く具体的なポイントが熱く語られました。本記事では、その講演の内容をお届けします。

〔講師〕金城 実(医学博士 株式会社MDジャパン)

1.なぜ、予防医療が必要なのか

どれだけ高い医療を施しても、救える命は限られている――。その現実を痛感した私は、27年前に麻酔科医として働いていた大学病院を辞め、予防医療の普及に専念することを決意しました。集中治療室では、10人の患者のうち病棟に移れるのは約5人、そのうち社会復帰できるのはわずか2人ほど。この現実を前に、医療とは何かと深く考えさせられました。

ニューヨーク留学中、ある医師の「西洋医学だけでは人の命は救えない」という言葉も、私の人生を変えるきっかけになりました。実際、アメリカでは予防医療の普及により、1990年代からがんや心疾患による死亡率が低下しています。一方、日本では、今も増加の一途をたどっています。

現代医療は、病気が発症してから対応する、いわば「修理工場型」の仕組み。「病気になったら、治す」というのが原則です。しかし、病気が進行してから治療を始めても、死亡率は下げられないのが現実です。本人の負担も計り知れません。家族も職場の人も、みんなが苦しみ、後悔し、悲しみます。そうした現実を変えるために本当に必要なのは、病気を未然に防ぐこと。そのために求められているのが、予防医療です。

予防医療とは、日頃から健康に気を配り、小さな不調も根本原因から解決して、病気を未然に防いでいくための医療アプローチです。

2.健康診断では病気を防げない

近年、多くの企業が健康経営に取り組み、「健康診断の受診率100%」を目標に掲げています。しかし、それは「真の健康経営」といえるのでしょうか。

まず考えてほしいのは、健康診断に行くだけで、はたして病気を防げるのか、ということです。答えは「NO」。健康診断はあくまで病気を「発見する」ものであり、「防ぐ」ものではないからです。

たとえば、体内で発生した1個のがん細胞が、1センチの腫瘍になるまで、どのくらいの時間がかかるかご存じですか? 約9年といわれています。その間、毎年健康診断を受けていても、「異常なし」と診断されることがほとんど。なぜなら、1センチ未満の腫瘍は、たとえ画像検査を受けたとしても、写らないことが大半だからです。つまり、通常の健康診断では、がんを発見するのは難しいのです。

なお、運よく1センチ大のがんを見つけることができると、「早期発見」とされます。この大きさではまだ自覚症状がありませんから、早期発見できると「よかったね」といわれるでしょう。では、あなたは、その現実を素直に喜べますか? 「去年まで異常なし、と診断されていたのに」と驚く人がほとんどです。

ですが、実際には、去年まではがんが小さくて検査で見つけられなかっただけで、体の中ではがんが進行していたのです。

つまり、健康診断の受診率100%を目指すだけでは、「真の健康経営」とはいえません。健康経営は、本質をつかんで進めることが何よりも重要です。

では、健康経営の本質とはなんでしょう。それは、社員の健康であり、病気にさせないこと。反対に、健康診断の受診率は高いのに、社員ががんや生活習慣病、うつ病などのメンタル不調になるのだとしたら、「真の健康経営」を行えていない、と捉えてよいかもしれません。

3.健康経営にはコストがかかる?

「健康経営にはコストがかかる」という経営者も多くみられます。そこで考えてみてください。社員が病気になった場合、会社の損失は、どのくらいになるでしょうか。

たとえば、脳卒中を発症すると命は助かったとしても、後遺症が残るケースが多く見られます。また、半年から1年で復職できるのは、3割ほど。休職期間中、新たな人財を雇えば、そのぶんの給与や教育費が発生します。具体的には、1人の社員が病気(がん、心臓病、メンタル不調)で3か月間休職すると、最低300万円もの損失が出るといわれています。

では、経営者や管理職が病気になった場合は、どうでしょうか。意思決定の遅れや機会損失によって、状況はさらに深刻なものになるはずです。

それに比べて、予防にかかるコストは、社員が病気休職した際のわずか10分の1以下。そう考えると、健康経営は本当にコストがかかるといえるでしょうか。むしろ、会社の未来への投資となるのではないでしょうか。

ここで、質問です。3年後の会社を想像してみてください。「病欠や体調不良、メンタル不調が多く、休職や離職が相次ぐA社」と「元気で活気があり、離職率が低く、優秀な人材が集まるB社」、どちらを望みますか? 答えは明らかですね。会社がB社であるためには、健康経営を経営戦略の一環として捉えることが必要なのです。

4.社員の健康リスク、見落としていませんか?

最近、頭痛、肩こり、手足の冷え、疲れやすさ、不眠、胃の不調などを感じていませんか? これらの症状は軽く見られがちですが、放置し続ければ、生活習慣病やがん、メンタル不調につながっていく可能性のある症状です。

多くの人は、不調を感じると薬に頼る傾向があります。しかし、薬で一時的に症状を和らげても、根本的な原因が解決されない限り、同じ不調は繰り返されます。病気を防ぐために真に重要なのは、一時しのぎの対処ではなく、生活習慣や職場環境の改善を通じて、根本原因にアプローチしていくことです。

とくに、職場環境が社員の健康に与える影響は大きく、長時間労働やハラスメント、過度なストレスが社員の健康を脅かしているケースもあります。

では、再度お尋ねします。ご自身の会社には「ハラスメントはない」と断言できる方はいますか。

人が5人集まればハラスメントが発生する可能性がある、といわれています。「うちは問題ない」と思い込むことが、最大のリスクと私は考えます。

とくに注意が必要なのは、経営陣の前で社員が大人しくなってしまう会社。社員が自由に意見や希望を言えない職場では、問題が表面化しないまま、不満やストレスが蓄積していきます。その結果、社員に心身の不調が生じ、やがては能力の低下や離職率の上昇につながる恐れが出てくるのです。

かつて、NASAのスペースシャトルが墜落した事故では、技術者たちは危険を察知していたものの、「過去は問題なかったから」と彼らの意見が無視され、大惨事となりました。すべての職場において、同じリスクが潜んでいます。小さなサインを見逃すことが、将来的に大きなリスクにつながりかねない。経営者は、この教訓を肝に銘じ、社員の声に正面から向き合う必要があるのでしょう。

そのためには、どうしたらよいのでしょうか。社員の健康状態を「見える化」し、早めに気づける体制を整えることです。

具体的には、日々の生活の中で、社員自身が健康を意識し、病気予防に向けて自ら気軽に動き出せる施策を導入すること。それこそが「真の健康経営」の第一歩です。そんな「真の健康経営」の実践があってこそ、社員が元気に働き、彼らのパワーが企業の成長を支え、日本の未来を明るく照らしていくのだと、私は信じています。

【取材後記】

金城氏のセミナーを聴講し、健康診断だけでは病気を防げない現実と、日々の健康意識の重要性を改めて実感しました。金城氏が開発した予防医療アプリ「Dr.セルフチェック」は、病気のリスクを早期に察知し、具体的な改善策を提示してくれる画期的なツールです。このアプリは、社員が自分の健康を主体的に管理するきっかけにもなるでしょう。今回の学びを自社の健康経営にどう活かしていくか、考えを深める貴重な時間となりました。

〈企業データ〉

会社名:株式会社MDジャパン

事業内容:医学博士考案 健康ダイエットプログラム「Dr.ダイエット」、医学博士考案 予防医療プログラム「Dr.セルフチェック」

所在地:岡山県岡山市北区岩田町2-22-1503

〈企業データ〉

会社名:株式会社エーオーエーアオバ

事業内容: 健康食品・自然食品の販売、環境浄化機器システムの開発及び販売、医薬品・医療機器・化粧品の輸入販売、企業経営コンサルタント業

所在地:東京都文京区目白台3−4−11 ジーエフビル

資本金:1億円

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