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「健康経営」認定のエビデンス対策は、安全衛生優良企業の取組に学べ

2019年2月5日に東京・渋谷で開かれた「安全衛生優良企業セミナー&発表会 2018(厚生労働省委託事業)」。午後に行われたSession 4では、非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構理事長の木村誠氏が「健康経営のすすめ」をテーマに、経済産業省が進める「健康経営優良法人」の概要と認定取得のノウハウについて具体例を交えながら講演しました。木村理事長は、健康経営のベースとなっている厚生労働省の安全衛生優良企業公表制度について知り尽くすエキスパートだけに、その講演には多くの示唆に富んだ内容が含まれ、セミナーへの参加者一同納得しながら聞き入りました。

1.生産性の向上と企業のイメージアップ

経済産業省が進める健康経営優良法人の認定制度は、厚生労働省の安全衛生優良企業公表制度の基準をベースに創設されたもので、健康経営の内容は安全衛生に包含されています。

「健康経営のすすめ」をテーマに登壇した非営利一般社団法人安全衛生優良企業マーク推進機構理事長の木村誠氏は、健康経営の最新のトピックスから話を始めました。

「先週、健康経営アワードの発表会が2月21日に行われると発表されました。健康経営で難しいのは、毎年発表の仕方や基準内容が変わりますので、目が離せないということです。なお、発表会には認定申請した企業以外の一般企業も参加できます。」

「そもそも健康経営とは何かというと、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法ということです。

メリットとしては、まず生産性の向上が挙げられます。それ以外にも企業のイメージアップ、特に採用活動に大きな利点があります。背景は、生産人口の減少と高齢化、人手不足の問題、医療費の増大、働き方改革といったことが挙げられます。

これは国策としてヘルスケア産業を盛り上げていこうという狙いとともに、構造的な問題として人口減少をどう食い止めていくか、医療費が増大していくという点では、亡くなる直前まで元気でいてくれれば、医療費を抑制できるという考え方があります。

人手不足もとりわけ中小企業を中心に深刻になっています。日本商工会議所が平成30年6月に行った調査では、人手不足と答えている企業が65%に上ります。過去5年間を見ても右肩上がりで人手不足を訴えていますので、ここをなんとかしていこうということが多くの企業の共通する問題意識になっています。」

「厚生労働省の安全衛生優良企業公表制度は、下部組織の労働局が受け皿になっています。これに対して経済産業省の健康経営優良法人の認定制度は、日本健康会議という組織を作り受け皿にしています。

日本健康会議のメンバーを見ますと、著名な経済団体をはじめ医師会、知事会など、さまざまな団体が名前を連ねてオール日本といった組織になっています。」

2.申請内容で50%以内に入るのが第一関門

「次に健康経営の実務的な認定要件について説明していきます。健康経営には厳密には3つの種類があります。上場企業を対象とした『健康経営銘柄』と大企業向けの『健康経営優良法人』(ホワイト500)、中小企業向けの『健康経営優良法人』です。

ただし、健康経営銘柄は1業種1社が選ばれるというもので、毎年25社しか選ばれません。皆さんがチャレンジできるのは、大企業向けと中小企業向けの2つです。

いま、ご覧になっている資料『健康経営優良人2019(中小規模法人部門)の認定基準』は、中小企業規模となっていますが、この基準自体は大企業も中小企業も同じです。」

「年間のスケジュールとしては、まず認定基準は毎年8月に発表されます。その年の11月が申請の締め切りとなっています。認定基準は、この中で毎年変更になります。そして2月には結果が発表されるというサイクルになっています。

まず大企業向けのホワイト500は、8月に認定基準が発表されたところで健康経営の調査票を提出する必要があります。これには70項目にも及ぶ質問項目がありまして、ここで提出した企業の上位50%以上に入らないと、次のフェーズに進むことができません。」

木村氏は、ここで躓いている企業がたくさんある、と指摘します。

「2年間出したけど受からなかった、50%以上に入るにはどうしたらよいのか、という相談が増えています。おととしは受かったけれど、去年は受からなかったという企業もあります。

50%以上に入れた場合は、大企業では表中の評価項目1~15番のうち12項目を達成する必要があります。一方の中小企業は、15項目のうち6項目です。必須項目は、大企業、中小企業ともにクリアが必要です。

また、健康経営を評価するための5つのフレームワークとして、『健康経営理念・方針』『組織体制』『制度・施策実行』『評価・改善』『法令遵守・リスクマネージメント』があります。このうち、最も重要なのは、5つめの『法令遵守・リスクマネージメント』で、まずここをクリアしなければ先には進めません。」

3.評価されるエビデンスの提出ノウハウ

具体的な申請内容は、健康経営の申請書の一つ一つの項目にエビデンスの書類を添えて、記述していく必要があると木村氏は言います。では、どんなエビデンスをそろえればよいのでしょうか。認定基準表の上から順番に見ていきます。

「例えば大項目1の『経営理念』という点においては、経営者の自覚が大切です。また、最も大事なこととして、法令違反していないことをトップが宣言している必要があります。
それに対するエビデンスとしては、健康宣言書的なものを作って事業場の入り口に貼っている、ホームページに掲載している、社員全員にメール配信しているというなどが挙げられます。

大項目2の『組織体制』については、健康経営に取り組むための仕組みや組織を持っているかということが問われます。例えば事業場ごとに健康作りの担当者がいるなど、企業規模によっては衛生管理者や安全衛生管理者がいれば、その担当者が兼務することも可能です。」

「続いて評価項目①~④の『従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討』ですが、この中で一番難しかったのは①の定期検診の受診率を100%にすることでした。ホワイト500の570社の中でも、これができている企業は60%しかありません。

その次に難しかったのが、②の50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施で、できているのは92%です。2番目でも92%なので、健康診断の受診率100%の企業が60%しかいないのはあまりにも低いと言えます。

労働安全法は、事業主には定期健康診断の実施義務、労働者には受診義務を定めていますので、ぜひ定期検診の受診率100%を目指してください。」

「④の健康増進・過重労働防止に向けた具体的な目標(計画)の設定では、厚生労働省は特に過重労働防止について非常に力を入れていますが、この例としては残業時間を10時間削減する、有給を5日増加させる、水曜日はノー残業デートする、といった施策が挙げられます。」

4.禁煙セミナーやラジオ体操、BBQも可

「続いて評価項目⑤~⑧の『健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりとワークエンゲイジメント』ですが、この中には4つのポイントがあります。

まず、⑤のヘルスリテラシーの向上では、管理職又は一般社員に対する教育機会の設定という評価項目があります。これはセミナーを実施する、研修をおこなう、といったことで達成できます。例えば集合研修では従業員向けの禁煙セミナー、管理職向けメンタルヘルス講習が挙げられます。

こういったことを実施しようとしたときに、健康保険組合や自治体などが無料で対応しているものがありますのでぜひ探してみてください。例えば禁煙セミナーを依頼すると、講師が会社に来て無料で開いてくれるといったものもあります。それが実行できればこの項目はクリアできます。

また、定期的な情報提供としては、朝礼で衛生管理の担当者が健康作りについての説明をするといった対応も考えられます。」

「次は⑥のワークライフバランスの推進についてです。適切な働き方実現に向けた取組という評価項目ですが、ワークライフバランスとしては、長時間労働とそれに伴う健康問題、仕事と育児や介護との両立、少子化対策などの課題解決、さらに指標としては年間総実労働時間や年次有給休暇取得状況が挙げられます。

具体的には、定時の消灯日や退社日を決める、リフレッシュ休暇を設定する、などがあります。昨年、厚生労働省は『しょくばらぼ』というサイトをつくり、健康衛生優良企業のマークを取得した企業と企業の基本情報、具体的な取組も掲載されていますので参考にしてください。」

「⑦のコミュニケーションの促進に向けた取組では、スポーツイベントを実施する、バーベキュー大会をおこなう、など、コミュニケーションを図ることをうたえるものであればよいので、例えば毎朝朝礼でハイタッチをやっているというのでも構いません。

⑧の病気の治療と仕事の両立の促進に向けた取組(メンタルヘルス対策以外)は重要なポイントです。これは病院に通いながら仕事ができる環境にあるか、ということが評価のポイントになります。健康で朝から晩まで働いてくれる正社員を採用できる時代ではなくなっていますから、そうでない人材も制度を整えて働いてもらうという趣旨です。

例としては従業員から両立支援の申し出があった場合の対応手順や相談窓口、担当者や連絡が決まっていることを明文化しておくとよいでしょう。

このほか、治療に配慮した『時間単位年次有給休暇制度』『時差出勤制度』などの休暇制度、勤務制度を整備し、就業規則に明文化しておくことも求められます。」

5.本質的に取り組むべき女性の健康保持

「⑨の保健指導の実施または特定保健指導実施機会の提供も非常に大事です。ここの項目は全員対象で保健指導を実施してくださいということになっています。

例としては、産業医や保健師などによる保健指導を全員集めて実施するといったことが挙げられます。特定保健指導実施時間の出勤認定や、特定保健指導の実施場所に社内の会議室を提供するなど、社員が使える環境を提供しているかが評価のポイントになります。

次が⑩の食生活の改善に向けた取組です。ここは栄養バランスのよい食事を取ってくださいという趣旨ですから、いろいろな方法があります。例えば自動販売機を置いている企業なら、その内容を低糖質・低カロリーのものに変更するなどが挙げられます。

個人の嗜好にそこまで干渉できるのかという疑問もわくかと思いますが、健康経営というのはいわばお節介制度ですから、社員がそれを受け入れてくれない場合もあります。それならば自動販売機の内容を入れ替えた方が早い、と考えられます。」

「⑪の運動機会の増進に向けた取組については、ラジオ体操をやるということでもいいですし、万歩計を渡すといったことも挙げられます。しかしただ万歩計を渡すだけですと、なかなか自発的にやらないので、そのデータを毎日会社が収集して社内のランキングを出す、そのランキングを全国の人と比べる、といったシステムを作っている会社もあります。

また、就活生向きには、福利厚生制度を充実させるというのは、採用に向けては大きなポイントですから、部活動を作るのも有効です。

そしてまだ十分に取り組めていないと痛感するのが、今年から新しく加わった⑫の女性の健康保持増進に向けた取組の項目です。女性の健康保持に関しては、取り組めることがいろいろありますが、この分野は対応できていないことがまだたくさんあります。

本質的なことに取り組みたいのであれば、まず女性の健康作りを推進する部署やプロジェクトチームを設置することをお勧めします。」

「⑬の従業員の感染症予防に向けた取組としては、例えばマスクを強制的に全員に配る、インフルエンザ予防接種の費用を出す、仕事中に病院に行っても構わないことにする、あるいは消毒液を入り口に置いて必ず使うなど、そういったことを施策としておこなっていただくことが挙げられます。」

6.勤怠システムを導入し、過重労働を管理

木村氏は、⑭過重労働対策の長時間労働者への対応に関する取組も、本質的に取り組んでほしいところだと強調します。

「自社の目標値をどのくらいに設定するか、上限を80時間とするのは、だいぶ時代遅れの話です。安全衛生優良企業の上限は45時間ですから、ここはできればそれに近いレベルで設定していただきたいところです。

それを監督する上司は、ときどき集まって対策を話し合うとよいでしょう。過重労働の対策を話し合うのは、リアルタイムであればあるほどいいわけで、それではどうやって計算するかということになりますので、勤怠システムの導入が有効です。

勤怠システムがなく、手書きやエクセルでは、何カ月も後になってからしか対策が打てません。勤怠システムを入れて残業が45時間以上になったら上司が飛んでくる、そのぐらいの対応が欲しいところです。」

「⑮のメンタルヘルス対策の不調者への対応に関する取組も大切です。メンタルヘルスに関しても過重労働が関係しています。

ストレスチェック義務化後、3年を迎えたところで、とりあえずやっておけばいいという企業と、もう少し改善させたいという企業に分かれてきていて、改善させたいという企業はいろいろな方策を始めています。例としては高ストレス者への面接指導体制の構築などが挙げられます。

最後に、裁判例を通じて企業の安全配慮義務として指摘されている事例にも注意してください。これは認定マークを取得する一つの意味にもなっています。」

そして木村氏は、認定取得のもう一つの効果について次のような例と共にまとめました。

「例えば万が一労働事故が起きてしまったとき、マークを取得していれば会社側としては安全配慮義務を果たしていたということが言えます。逆に言うとそういうものがなければ証明するものがないことになるので、何か認定マークを取得しているということは、裁判になったときも非常に心強い材料となるのです。」

いかがだったでしょうか。認定取得をご検討の企業の方は、ぜひご参考になさってください。

↓↓ 同日おこなわれたSession 3のセミナー記事についてはコチラ ↓↓

↓↓ 同日おこなわれたSession 5のセミナー記事についてはコチラ ↓↓

たった2分でストレス減少!生産性・創造力も向上させる瞑想のススメ

弊社セルメスタでは今回、米国グーグルなどのIT企業でも導入されていることで話題の「マインドフルネス」第2弾として、「NLP~神経言語プログラミングと瞑想のススメ」を実施いたしました。NLPとは人間が持つ「五感」から、その人の特徴を把握してコミュニケーションに活用します。さらにその五感を使った瞑想を行い、ストレス減少、そしてリラックスして生産性や創造力を高めることを目標としています。身体的な疲労に対して軽視されやすい「心の健康を保つこと」は、これから健康経営を進め、そして健康経営優良法人を目指す企業には欠かせない分野です。セミナー前後で行ったストレスチェックで驚きの結果も出た、今回のセミナーをみていきましょう。

1.健康経営の基礎となる「円滑」なコミュニケーションのコツとは?

この日、最初に登壇されたのは“瞑想家”の中川 正心さん。中川さんには日常で感じるストレスの多くの理由である「コミュニケーション」を、人間が持っている五感から分析していく手法(NLP:神経言語プログラミング)を紹介していただきました。

日本NLP協会によると、NLPとは「引用:人間は、自分が体験した出来事を五感(神経)『視覚、聴覚、体感覚、味覚、臭覚』を通して認識し、言語/非言語によって意味付けを行い記憶として定着させます。私たちは、生まれてから今に至るまでたくさんの経験や体験から様々な意味付けを行い、自分の考えや思い込みというものを作っていきます。ある程度の年齢になると考え方や生き方、反応の仕方に一定のパターンができてきますが、このことをNLPでは「プログラミング」と言っています。」

中川さんからはさらに、人間には五感のうちもっとも得意な「優先感覚」があり、その優先感覚によってコミュニケーションのとり方が変わってくるという説明がありました。たとえば、「視覚優位」な人は常に頭の中にイメージを浮かばせながら会話をしたり、「聴覚優位」の人は「音」や「自分や他人の噂・評判」を気にしたり、「触覚優位」の人は時間をかけながら物事を自分の身体に落としこんでいく、などの違いがあるそうです。さらに、人は無意識に他者を「自分と同一視(自分の延長として)」して考えてしまい、同じような「考え方(優先感覚)」を持つ人と思ってしまうことがよくあり、そういった思い込みからもコミュニケーションのズレが出てくるのだと言います。

「他者とのコミュニケーションを円滑にするためには、感覚の違いを理解することが大切」と言う中川さんは実際の経験からもこのことを強く感じたそうで、会社員時代に優先感覚を意識した結果、はるかにチーム内での生産性が上がったとおっしゃっていました。

そしてこの優先感覚、簡易的にチェックする方法があります。皆さんは、「りんご」と聞いて何を思い浮かべたでしょうか?

「赤い」や「丸い」といった印象が真っ先に思い浮かんだ人は「視覚優位」です。「甘さ」や「酸味」を思い浮かべていれば「味覚優位」な人でしょう。実際のセミナーでは、このような優先感覚ごとにどのようなコミュニケーションをするべきか、詳しく教えていただきました。

2.コミュニケーション不全からくる「ストレス」は悪いもの?

コミュニケーションなどの人間関係、仕事、プライベートなどさまざまなところで降りかかってくる「ストレス」。度重なるストレスに悩まされている方も多いと思いますが、ストレスは全くない状態がよいのでしょうか?

いえ、ストレスは人間には必要不可欠なものです。「自身が成長するため」や「生き残り(防衛本能)」のために必要と言われており、ストレスが問題になる場合はズバリ「ストレスが連続してかかり、多すぎる」状態です。ストレスは本来「短期的」なものであり、連続してかかるようなものではありません。しかし、現代のようにいつでもどこでも連絡が可能な世の中では、ストレスが常にかかりやすい状況であるといえます。ストレスがかかり続けている状態というのは、いわば「森の中でクマに何十年も追われ続けている」状態です。

そんな状態を改善するには、「短い間でもストレスを断ち切ることが重要」だと、中川さんはおっしゃっています。短時間でも一旦ストレスから解放されることで、風船に入れた空気が抜けるようにリセットができ、その後また原因の同じストレスがかかっても、違うストレスとして捉えられるそうです。さらにこのリセットを続けていけば、そもそもストレスとして感じなく(認識しなく)なる場合も。”ストレスフリー”と呼ばれている人は、このようにストレスの使い方が上手で、逆に自身のバネとして活用できる人をそう呼んでいます。

このストレスを一時解放するために有効なのが、「瞑想」です。瞑想では「無」の状態になることで、一時的にストレスから離れることができます。その結果ストレスのリセットができ、心の安定につながっていくのです。

3.~実際に瞑想をやってみる~ 五感を使ったVAK瞑想

続いて登壇されたのは”瞑想家”や”ヨガインストラクター”としてご活躍中の菊池 裕子さん。菊池さんには実際に瞑想のやり方を教えてもらいました。

今回教えていただいたのは、五感のうち視覚・聴覚・皮膚感覚の3つを使った「VAK瞑想」と呼ばれるものです。この瞑想法は、「短時間」で「いつでもどこでもできる」のが特徴です。なかなか日々の生活が忙しく、時間が取れないビジネスパーソンでも取り組みやすい瞑想として紹介していただきました。

「視覚」を使った瞑想では、事前に周りの景色や状態を確認し、その後目をつぶって先ほど見た景色を追うようにして思い出していきます。「聴覚」を使った瞑想は、目をつぶり日常に広がるさまざまな音を拾っていきます。部屋の中の音や、外の音、そして自分の身体の音にも神経を傾けましょう。「触覚」を使った瞑想は少し難しく、集中力が必要です。まずはお腹に手を当ててみましょう。お腹と手のひら、どちらが温かいでしょうか?もしもわからなければ、手を叩いてみましょう。手のひらがジーンとなったり、「ジワーッ」と温かくなったりしたのではないでしょうか?これが身体感覚です。この感覚がわかったら、身体の中で熱を感じられる箇所を探していきます。

これらをVAK瞑想と言い、2分間で同時に行っていきます。最初は難しいと思いますが、毎日続けていくことでどんどんスムーズにできるようになります。終わったあとは身体的な疲労感に包まれますが、心がスッキリとするはずです。このような「無」の状態を作り出すことが、ストレスから解放されるということです。

4.健康経営に敏感な企業が取り入れる「マインドフルネス」と「瞑想」の関係

最後に、”ヒーラー”や”瞑想家”として活躍する佐藤 今日子さんが登壇され、「コンパッション瞑想」の講演・実践を行いました。コンパッション瞑想とは「慈悲瞑想」という意味で、言葉の力によって精神的な安定を作っていく瞑想です。コミュニケーション(言葉)は生活をしていく上で必ず使うものであるため、上手に扱わないとストレスの原因となってしまいます。

今でこそ、コンパッション瞑想を教えている佐藤さんですが、会社員時代にはコミュニケーションが原因で身体を壊す時期もあったそう。薬を飲みながら業務を続けていたそうですが、佐藤さん曰く、『今思えばあの時は自分を大事にしていなかった』とおっしゃっていました。

コンパッション瞑想では、自分や周りの人に対して愛情を注いでいきます。目を閉じて、自分が好きな人や大切な人を思い浮かべ、「願いが叶うといいね」「幸せだといいね」など、ポジティブな言葉を投げかけていきます。スキンシップが得意な人であれば、イメージの中で抱きしめてあげるのがいいそうです。そうしたら、つぎは嫌いな人、自分自身、すべての人に対してポジティブな言葉をかけていきます。気持ちが乗らなかったり、嫌な気持ちになったりするようだったら、やらなくても問題ありません。

このコンパッション瞑想は、お釈迦様が生きている頃から行われている仏教の「慈悲の瞑想」からきています。グーグル社でも「マインドフルネス」とセットで行われ、とても相性がいいものとされており、実際のお釈迦様の教えの中でも「マインドフルネス」と「コンパッション瞑想」はセットで行うようにと言われています。また、コンパッション瞑想には集中力を高めやすいというメリットもあります。

コンパッション瞑想を行うことによって、嫌いな人の時に思い浮かべていた人が、好きな人の時に浮かぶようになったということもあるそうです。このように「言葉」は人間に対してものすごい力を持っています。

5.社員のストレスチェックの結果、驚きの効果が!

今回のセミナーを受けてもらった社員には、セミナー前と後でストレスチェック「こころのエクササイズアンケート」と150万ダウンロードの人気スマホアプリ「COCOLOLO」によるストレスチェックを実施しました。このアンケートでは心の安らぎ感や、やる気など計10項目を5点満点で自己評価してもらいました。「セミナー前よりも心が落ち着いた」「頭がスッキリした」という意見が多く、なんと参加者平均で約22.4%ストレスが軽減しているという結果になりました。「COCOLOLO」による研修前、研修後のストレス状態の測定結果も参加者平均で、「ぐったり」から「のんびり」に改善が見られました。

また、別途インタビューに答えてくれた社員からは「最初に思っていた瞑想と180度違うものだった」「五感を研ぎ澄ますため身体は疲れたが、頭はスッキリするという不思議な現象が起きた」「通勤中の電車でも早速やってみたい」と、その効果に驚く声や、興味が湧いたという意見が多く出ました。

瞑想は「座禅を組んで行うもの」というイメージが強いですが、今回のVAK瞑想やコンパッション瞑想は気軽にできるのが特徴で、新たな「心のケア」方法としてすぐに取り入れることができます。ぜひ、健康経営の一環として、健康経営優良法人でも実践されている「マインドフルネス」や「瞑想」を業務の合間に取り入れ、社員の生産性や創造力を高めてみてはいかがでしょうか?

↓↓本セミナーの様子を動画でチェック!↓↓

<企業データ>

会社名:株式会社 セルメスタ(Selmesta CO.,LTD.)
事業内容:1.一般用医薬品、救急医薬品セット、介護用品、防災用品、健康食品の販売
     2.郵送検診事業の受託
     3.郵送検診キットの販売
     4.インターネットを利用した各種情報提供サービス及び販売
     5.医療費抑制事業
     6.不動産管理事務の受託
所在地:〒130-8671 東京都墨田区石原4丁目25番12号
資本金:9,900万円
従業員数:約60名

小さなことからコツコツと:森平舞台機構株式会社の健康経営

2018年2月に経済産業省/日本健康会議が共同で行う「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」に2年連続で認定された森平舞台機構株式会社。同年3月には健康企業宣言東京推進協議会が行う「健康企業宣言」における「金の認定」に東京都初となる認定番号『協金第1号』としても認定されている。同社は契約産業医と密に連携しながら健康経営を推進していらっしゃいました。森平舞台機構株式会社の健康経営について、森社長と、企業内の健康経営を推し進めている経営管理部の方々にお話を伺いました。 インタビュアー:株式会社セルメスタ 代表 熊倉利和

1.健康経営に取り組むことになったきっかけ・経緯

- 貴社の考える優良な健康経営について、および健康経営優良法人認定などに申請されることになったきっかけ・経緯を教えていただきたいです。

森社長:建設業という業種柄、全従業員の健康診断受診を始めとして社員の安全衛生管理には古くから取り組んでいました。2016年10月に現在の産業医と出会い、その先生を通じて健康経営の概念や認定制度を知り、本格的に健康経営に取り組むことにしました。

- 健康経営優良法人を取得するための書類づくり、体制整備はどちらの部署、どなたがなさったのでしょうか。

芦川さん:弊社でバックオフィスを担う経営管理部が担当しました。人事総務を担当する3名(芦川さん、山本さん、橋本さん)が、具体的な認定取得の書類作成などを行いました。

- 健康経営の認定を取得するまでには、どれくらいかかったのですか?

山本さん: 「健康企業宣言」における「銀の認定」と「健康経営優良法人2017」が当社としてはじめての健康経営の認定制度へのチャレンジでしたが、実は産業医の先生からそれらの制度を教えていただいたのは申請締切日まで既に1ヶ月ほどしかない時でした。とはいえ、それまでに健康診断受診や安全衛生委員会の活用など、実績が多くありましたので、兎にも角にもあとは書類を揃えて提出しようと取り組み、結果として両方とも認定を取得することができました。

橋本さん:申請には様々な施策を実行したことを示すエビデンスの提出が求められますが、そうした材料も社内に多く蓄積されておりましたので、申請時に役立ちました。

2.特徴的な施策や注力している施策

- 健康経営施策のなかで、特徴的な施策や注力している施策について教えていただけませんか。

森社長:月に一回行う安全衛生委員会が、やはり当社の健康経営の軸になっています。

- 他社では、安全衛生委員会が形骸化してしまっていることも多いと聞きます。月一回の実施が義務付けられているのですが、実施している風に取り繕っているというケースもあるようですね。

芦川さん:そこは社長をはじめとした経営者が積極的に社内をリードしたことが大きく影響したと思います。安全衛生委員会への参加はもとより、全社に向けた施策を実行する際にはたびたび経営者がトップメッセージを発信したり、社長自身が率先して行動したりしています。それにより社員も健康経営の重要性を認識し、主体的に参加するようになったのではないでしょうか。

山本さん:産業医の積極的な参加も理由のひとつです。当社の産業医はとても積極的な方で、安全衛生委員会で積極的に健康に関する情報を発信したり、全社員に対して面談をしていただいたり、現場視察に来ていただいたりもしています。

森社長:工事現場というのは時期によって時間外労働が増えますし、精神的なストレスが多い現場です。そういった意味でも、現場の社員と産業医の関係性をより近いものにすることが重要と考えています。

- 他に、健康経営施策で力を入れているところはどのようなところでしょうか?

山本さん:健康経営優良法人制度の中では、やはり一番肝になるのは定期健診、特定保健指導、ストレスチェックの受診率を100%にするというところです。この点については確実に達成できるように取り組んでいます。

- 素晴らしいですね。定期健診の受診率を100%にすることだけでも、ご苦労様なさっている企業がほとんどです。特定保健指導は40歳以上の方に対して実施するものですよね。その実施率が100%とは驚きました。それは、どのように実現したのですか?

山本さん:まず特定保健指導については、定期健康診断受診後、その日のうちに同じ場所で特定保健指導を実施してもらえるクリニックと契約しています。それによって特定保健指導の受診率を100%にすることができています。

森社長:建設工事の現場に入る時には定期健診の証明が必要になりますので、そもそも定期健康診断は全員が受診しなければビジネスが成り立たない、という事情もあります。

- なるほど、定期健診と特定保健指導を同じ日の一連の動作にすることで、受診率100%を実現したということですね。ところで、特定定期健診は40代以上が対象ですが、それより若い人はどうでしょうか?

芦川さん:年齢に限らず、全社員の定期健診の結果はすべて産業医の先生にチェックしていただいています。健診結果により再受診が必要と判断された社員に対しては、定期健診から再受診までの一連の流れを記録する『健康診断後受診報告書』という社内帳票を産業医から発行し、問題所見を放置しないよう、経営管理部で進捗管理する体制をとっています。

写真:健康診断後受診報告書

- 再受診の案内を自社で出すことすら逡巡する企業が多いのが現実です。健康診断後受診報告書で社員の定期健診の事後フォローをするというのは、ほかの企業でも大変参考になると思います。ストレスチェック受診率も100%というのも素晴らしいですね。これも、どのように実現しているのかお聞かせいただきたいです。

山本さん: 当社には年に二度、安全大会という全社員が集まる会議があるのですが、初めてストレスチェックを実施することになった年にはその場で産業医の先生に目的や重要性について説明していただきました。同時に、社長からのメッセージも添付してテストの案内を社員に配布したところ、3日後くらいにはほぼ全員がストレスチェックを受検していました。産業医の先生がしっかりと熱く説明してくださったのもあって、重要性が伝わったのだと思います。早いスピードで実施することができました。

- 先ほどからお話に出ている産業医の先生は、とても積極的な方だと感じます。安全大会で産業医の先生から全社員にお話しいただけたのですね。

山本さん:はい、とてもありがたいことだと思っています。産業医の先生はストレスチェックだけでなく、組織分析、集団分析もやってくださいます。会社としてその結果を聞いて身につまされることもありますが、褒めていただけることもあります。こんな風に結果が返ってくるんだということがわかりました。先生の分析を受けることができて、良かったと思っています。

- ストレスチェックの判定の結果で高ストレスの判定が出た社員に対しての事後フォローはどのようになさっていますか?

山本さん:高ストレスだった方への面談は会社から強要することはできません。でも、高ストレスだからということで、なかなか自発的に自分から面談を希望するというのは難しいところがあります。そこで当社では、産業医との面談はストレスチェックの判定の結果に関わらず全員行うことにしています。

森社長:全社員が年に1度は産業医と個別に話ができる場を設けています。先程もお伝えしたとおり、社員と産業医の関係を近いものにできれば、と考えています。

山本さん:ストレスチェックだけのために産業医面談を受けるのではなく、定期健診の結果の健康相談と合わせて行うことにしています。むしろ同時に行うことで、面談しやすい環境を整えています。

- 出張所勤務など、遠隔地で勤務している社員に対してはどのような対応をされているのでしょうか?

芦川さん:先程の、全社員が集まる年に二度の安全大会のタイミングに合わせて実施しています。今後はweb会議システム等を用いた面談の実施も検討しています。

- 年1回の全社員の定期健診と、その結果を基にした産業医との健康相談は、実は産業医のストレスチェックの結果面談も兼ねている。そして、定期健診の結果が悪かった方には経営管理部の健康診断後受診報告書との産業医による再検査受診フォロー、これらの全てが確立されているのですね。さらに、毎月1回労働安全衛生委員会も実施されているということでした。とても、素晴らしいと思います。他に健康経営のために取り組んでいることはありますか?

橋本さん:日常的な通院等に利用してもらおうと、時間有給休暇制度を導入しました。従来は午前休、午後休など半日休が最小単位でしたが、改定後は2時間単位で取得できるようにしました。

- 時間休の利用状況はどうですか?

芦川さん:利用者は多く、社員の評判も非常に良いです。朝や夕方に病院によりたい、ちょっと用事を済ませたい、保育園にお迎えに行きたいなどという用事は2時間で足りることが多いようなので、とても使い勝手が良いようです。

- なるほど、その仕組みは他社さんも参考になるのではないかと思います。しかし、社員が細かく時間休を取得すると、管理が大変になるということはありませんでしたか?

森社長:勤怠管理は専用の管理ソフトを導入しています。社員がシステムで時間休申請をして上長が決済するという流れができているので、管理に関しては特に問題はありませんでした。

3.健康経営宣言後の社内外の変化

- 健康経営宣言をされてからの社内外の様子の変化などありましたか。

山本さん:当初は社内からの反応よりも社外からの反応の方が大きかったですね。取材の依頼を多数いただき驚きました。

- 社外から非常に注目されたということですね。社内の反応はいかがでしたか?

森社長:はじめのうちは社員によってかなり温度差がありましたが、徐々に社員の健康経営に関する意識が高まってきました。自主的にジムに通ったり歩く距離を増やしたりして運動の機会を設ける社員や、健康診断後の再受診や生活習慣の改善に真摯に取り組む社員も増えてきました。お客様と接する機会が多い社員は、名刺に印刷されている健康経営優良企業のマークを見た方から「これって何のマークなの?」と質問されることも多いるようで、自分の言葉できちんと自社の取り組みを説明できるようにと積極的に学ぼうとしている社員もいます。社内への地道な活動を継続してきた成果だと思っています。

- ところで、御社のHPを拝見すると社員は100名で、社歴110年と大変に歴史のある会社です。健康経営活動の影響は採用活動の方にはありましたか。

森社長:それは非常にありましたね。学生のみなさんは予想以上に健康経営に関する知識があり、関心が高いと感じました。

橋本さん: 新卒採用に限らず中途採用に関しても同様です。売り手市場が加速する中で、企業選びのポイントとして健康経営への取り組みに着目する方が増えているのではないでしょうか。健康経営に関する認定を受けていることで、採用競争力の向上につながっていると感じます。

4.苦労した点やモチベーション維持のために苦労した点

- 健康経営宣言後、ご苦労なさった点、モチベーション維持のためにご苦労なさっていることなどがございましたら教えていただきたいです。

山本さん: 先にも述べたとおり、社員ひとりひとりの健康に対する意識をどのように向上させるか、という点には苦心しました。当たり前のことですが、社員の食生活や運動を会社が強制することはできませんが、社員の健康はその人の行動によってしか実現し得ないものです。だからといって会社が「こうしなさい」「ああしなさい」と伝えるだけではだれも前向きに行動を起こさないと思います。ですから、健康経営の施策を実施する際には目的や意図を明確にて正確な情報をこまめに発信したり、社員が行動しやすいように担当者や経営者が率先して行動したりして、いかに社員の自主的な行動を促す環境をつくるか、という点に注力しています。
また、健康経営関連の認定を取得したり取材を受けたりした際には、自社のどういうポイントが評価されたのかというフィードバックもきちんと社内に発信するようにしています。社員ひとりひとりひ行動なしには認定を受けられなかったのは事実ですから。こうした点は今後も確実に継続していきたいと思っています。

5.今後の取り組みについて

ー 今後の御社の健康経営の課題などをお教えください。

森社長:これは、永遠の課題だと思っていますが、健康経営に関して積極的な社員とそうでない社員の温度差や理解度の差はどうしても生じてしまいます。それをどうしていくのかが、課題です。

橋本さん:社内のニーズを把握しようと、最近は全社に関わる施策を検討する際には、必ず社員に対してアンケートを実施するようにしています。社内では複数の委員会やプロジェクトが活動していますが、経営管理部以外にもこうしたグループからもアンケートを実施して社員の意見を聞いています。

- 委員会やプロジェクトとは?

芦川さん:働き方改革プロジェクト、美化委員会、心と体の相談窓口などです。例えば、ここ数年女性社員が増えてきましたので、美化委員会を立ち上げて社内の内装を改修したりもしています。

森社長:アンケートをきちんと取れば思いがけない課題がみつかることもあるので、そういう意味でも必要なことだと思っています。各プロジェクトや委員会のメンバーは可能な限り偏りがないように意識しています。

- 社員を巻き込む手続きを、より丁寧に実施していくことで、社員間の温度差をなくしていこうということですね。本日は、これから健康経営優良法人を目指す企業、健康経営を実践する企業にとって、とても参考になるお話をどうもありがとうございました。

写真:右から芦川さん、橋本さん、森社長、山本さん、インタビュアー

<企業データ>

会社名:森平舞台機構株式会社
事業内容:舞台機構設備、スタジオ設備等の設計・施工・保守の舞台総合メーカー
所在地:〒111-0033 東京都台東区花川戸2-11-2
資本金:8,000万円
従業員数:104人

社長の社員への愛情が健康経営の原点:株式会社東京すずらん

「健康経営優良法人(中小企業部門)」に認定された、株式会社東京すずらん。中小企業ならではの取り組み事例や社内外の反応効果などを代表取締役の石川啓夫さんと総務部長の池ノ谷幸枝さんにお伺いしました。お取組み事例の背景には、社長の社員に対する深い愛情があり、その愛情をひとつひとつ形にしてまとめたものが東京すずらんの健康経営でした。インタビュアー:株式会社セルメスタ 代表 熊倉 利和

1.健康経営の取り組みや健康経営優良法人認定申請の経緯

― 健康経営優良法人認定などに申請されたきっかけや経緯を教えてください。

池ノ谷 幸枝さん(以下、池ノ谷さん):弊社が契約している労務士さんから協会けんぽの銀の盾の取得に挑戦しませんかと勧められたことがきっかけです。銀の盾の次のステップとして、金の盾や健康経営優良法人認定があることを知ったのですが、項目をクリアしていたので、申請しようということになりました。

― 従業員向けの健康管理や増進のための取り組みは、以前から行われていたのですね。
そのような取り組みのきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

石川 啓夫さん(以下、石川さん):父がこの仕事をしていて、この会社ではありませんが手伝ったりもしていたので、従業員の方とも近い環境にいました。中小企業で仕事もクリーニング業ですから、そんなに労働意欲の高い方ばかりではありません。とくに、独身の方に多かったのですが、ケガや病気で人生を台無しにしてしまう人たちを見てきていたのです。
この会社にきて、現場管理者として働くようになってからも、身内の介護や自分の病気を理由に退職する人もいて。見ていると、健康管理の意識も低く、病気しないか、ケガしないかといつも気になっていました。実際、3~5年に一度くらいは、ケガや病気をする人が出て、その度に防げるはずだよなと感じていたのです。
当時の部下として偏食の新人社員が配属されたのですが、彼の好きなものしか食べない姿は忘れられません。偏食によって、どんどん太っていくのです。でも、親ではないのでそこまで介入できないから、ご家族に任せるしかないとなる。当然ですが、長年そういう風に育ってきて今更、身体に良い食事をしようとか、少し身体を動かそうとかいった発想は、待っていても出てきません。だからこそ、会社側から何かしなければと。池ノ谷にも、とくにパートタイマーの食事などを会社で介入して、何らかの影響を与えたいとよく話していたんです。私はケガや病気をした人たちを目の当たりにしてきて、そういう人たちは、退職してもケガや病気だと次の仕事でやれることも制限されますし、いいことはないですからね。

― 御社の従業員数は70名ほどということで、戦力を失うという点でも退職は痛手ですよね。

石川さん:いえ、業務は簡単なので、誰でも変わりはできるんです。単純労働も多いですから、経営上は、代わりの人が入れば済みます。ですが、そういう人たちに限って、自分の身体のことをあまり考えていなかったりします。やはり、現場で一緒に働いていると、代わりがいるからとは割り切れません。何かやれることはないかと常々考えていました。おせっかいといえばおせっかいなんですけどね。

― 身内のような感覚なのですね。

石川さん:社員の一生を考えるとき、企業としてできるのは、一つは、賃金が上がりつつ勤続してもらうことだと思います。そのために、少しずつ作業を覚えてもらい、判断できるようになって、最終的には、教える側になることも課題になりますよね。そして、もう一つはやっぱり、健康維持は欠かせませんから、そこも併せて、企業として何らかの配慮をしていかなきゃと思ってやっています。

2.健康経営優良法人認定に役立つ、健康経営の施策

― 御社の健康経営の特徴的な施策や注力している施策の事例を教えていただけますか。

■禁煙のための施策

石川さん:近くの大企業さんから紹介いただいて、禁煙のためのアイコスの購入補助金を出すようにしました。本当は、禁煙してほしいのですが、少しでもその方向に踏み込んでもらう人を増やせたらと。最近になって、禁煙手当も始めました。

■健康診断

池ノ谷さん:定期健康診断は、元から100%クリアしていました。従業員への周知など啓蒙活動もしています。

― 定期健康診断の100%クリアは、結構ハードルが高いものだと思うのですが、総務の方の周知から一定期間内に受診する仕組みができあがっているんですね。

池ノ谷さん:そうですね。巡回検診のバスが会社に来てくれるので、もれなく受診できているようです。

■労働安全衛生委員会とストレスチェック

石川さん:産業医の方が来られて、話をして、伺ったことをノートに取らせていただいています。2、3年前から、月1で、私たち二人と産業医の先生で行っています。

― 法定ストレスチェックは何名受けられていますか?

石川さん:全員やってもらってます。

池ノ谷さん:産業医には、出てきたデータに関して、最後の面談をお願いしています。

― 高ストレス判定が出て、希望する社員に対しての面談ですね。一度、高ストレス判定がでるとその後、数年は出てくるのではないですか?

池ノ谷さん:2、3名です。だんだん減っているんですけどね。

石川さん:高ストレスが出ちゃうと、次に正直に書かなくなってしまうんです。今、人数が減っていると言ったのは、明らかに会社側からみてストレスを溜めている人が、2回、3回とやっているとストレス判定が出づらい傾向が出てきているので、ほんとうに今のやり方でいいのかなとは思っています。

■職場の健康づくりと交流イベント

池ノ谷さん:職場の健康づくりとしては、戸田スポーツセンターで一緒に1~2時間、運動する機会を設けていました。

石川さん:きっかけは、私の現場業務が少なくなって、太ってきて、運動不足ということがわかって。一人では続かないということを池ノ谷に話していました。そこで、社員を集めてジムに少なくとも月に一回は行こうよということになったんです。

― ジム通いはどれくらい続いたのですか。

石川さん:3年は続いたと思います。

― 月1回の開催の声掛けはどなたがなさっているのでしょうか。

石川さん:私が声をかけていました。平均して3~4名くらい参加していたと思います。

池ノ谷さん:また、月に一回は、人間関係を深めるための山登りや飲み会などの交流会を開催しています。

― お話を伺っていると、経営職に入られてからも、石川さんと従業員の皆さんの距離が近いですよね。

石川さん:いえ、遠いんですよ。以前は、中間管理職もほとんどいなくて近かったですが、最近は遠く感じてます。会社でソフトボールやフットサルの人数確保ができていたのは、距離が近かったからだと思うんです。好きな人は1割くらいで、それ以外は、言われたから仕方なく来てくれる。仕方なくても来てくれる人間関係があったと思います。そういう意味では、距離は遠くなった気がします。

― きっかけは、石川さんがやろうって声掛けされるんですか?

石川さん:現実には、そうですね。ほぼ私です。

― それを池ノ谷さんがお手伝いやとりまとめをされるのですか。

石川さん:スポーツセンターは池ノ谷にやってもらっていましたが、山は登山が好きな他の社員に。フットサルの場合は、フットサルが好きな社員にアレンジを任せ、それぞれの社員に「そろそろ行こうよ」ってお願いしています。

― 仕事以外の部分でも、社員との交流がお好きなんですね。

石川さん:好きというよりも、交流をしないと社員の顔色が曇ってくるのが気になって。接点を持つことで人間関係が希薄になることを防止できればとは思っています。

― そういった社員とのイベントでの接点は何年前くらいから持たれているのですか?

石川さん:私が1999年にこの会社に来て、1年経ったあたりから、思ったことをやっていこうと取り入れてきました。人それぞれ好き嫌いはありますから、それぞれに合わせるようにして。お酒が好きだったら、そういう場をつくり、スポーツ好きであればスポーツの機会を持つし、常にいくつかのことをコンスタントにやるようにはしています。私はお酒の場は苦手なのですが、それでも顔色を見てこのままではいけないと思ったら、やっぱり行きます。動機はそこにあると思います。曇った社員の顔を見て動き出すので、本当はもっと、もっと、効果的にやっていかないといけないんですが。

― でも、石川さん自身の社員さんとの一か月の接点は、かなりの回数になりませんか?

石川さん:月2回くらいだと思います。全員一度に集まるわけではなく、毎回数名ずつ。全部の社員との接点となると、年に2回くらい、もっと少ないかもしれません。逆に人数が多いと話す機会が減ってしまいますからね。できれば、社員間で交流をしてほしいというのが本音ですね。社員間の交流が足りていないんです。

― なるほど、社員間の交流のきっかけになればという思いがあって声かけや、趣味などの目的提供をされているわけですね。月1の交流会の内容をもう少し伺ってもよろしいですか。

石川さん:基本的には、社員全員を見て、「あの社員最近元気ないな」とか、「あの社員孤立してそうだな」など、まずはターゲットを見つけるように(池ノ谷には)伝えています。
ターゲットが見つかれば、その人の土俵というか好きなこと、たとえば、釣りが好きだったら、その人をリーダーにして釣りに行こうとか。秋葉原行くのが好きだったら、秋葉原に行こうみたいな、その人に合わせて何をするかを決めています。だから、バラエティに富んでくるのではないでしょうか。

― そうすると、ターゲットとなる人のところに池ノ谷さんが行って…

池ノ谷さん:全員ではないです。私が行ったほうが頷いてくれそうな人には出動命令が出ます。

― 出動命令は石川さんから出るんですね。素晴らしい仕組みですね。

石川さん:必要ない会社は必要ないと思います。うちの特徴として、そこまでやらないとどうしても横のつながりがなくなる気がします。人間関係の中心になる人がいれば解消できると思うのですが、みんなおとなしいので。

― 社風や組織に合わせた仕組みとして交流会があって、それが健康経営にはまっていたということですね。

石川さん・池ノ谷さん:そうですね。その通りだと思います。

3.健康経営優良法人認定後の社内外の反応や変化

― 健康経営宣言をされてからの社内外の様子に変化などはありましたか。

石川さん:表彰式には有名企業さんが集まられて、こんなにすごいものだと知って驚いています。今までの認証の中で、一番取得後の周りからの反応というか、声をかけていただくことが多いと感じます。税理士事務所の方から、「先越されたー、うちも取ろうと思ってたんです」といわれたり、経営者の集まりとかでも「すごいの取ったねー」と声をかけていただくこともありました。

― 名刺には健康経営優良法人とは書かれていませんね。石川さんから「取ったんです」という話をされるんですか?

石川さん:いえ、一切してないです。どういう形かはわからないんですが、情報が入ってくるみたいですよ。保険会社の方もどこかで情報をキャッチされてるようです。こちらからの働きかけは、まったくしていないのですが、雑誌に掲載してもらったり。とにかく、知らない間に伝わったり、広がったりしているのは初めての経験ですね。

池ノ谷さん:採用の時には、健康経営優良法人認定のことを聞かれることが増えました。取得を認識してもらう効果は感じています。ただ、社内の人たちが、どう思っているかは今一つだと思います。

― 今までの流れの延長線上のものなので、特別なことと感じられないのかもしれないですね。ただ、採用の部分でいうと、ホームページをご覧になった方の反応があるということですね。実際に新卒採用、中途採用の動きに影響はありましたか?

石川さん:将来的に新卒を定期的に採用したいと思っているのですが、まだその手前です。このような認定を取ることも、その準備の一つです。

池ノ谷さん:説明会では学生さんは、配られる冊子を見ながら、安心だなと思う企業を順番に回られると思います。

― 以前お話を伺った企業様で、健康経営の認証を受けていることで内定辞退が減少した例もあります。親御さんに相談する際も「健康経営をやっているなら安心」という反応が多いようです。アピールとしては、積極的に使ったほうがよさそうですね。

4.健康経営継続を見据えた今後の取り組み

― 今後、力を入れていきたいということはありますか?

池ノ谷さん:何かをプラスするというよりも、意外に継続が難しいんですよね。来年も取得するためにも、振り返りは必要だなと。私は今、社長の想いを引き継ぐ形ですが、本来自分が伝えていけるようにならなきゃなと思っています。

― 池ノ谷さんが申請などを統括してこられたと思うのですが、他に二人三脚でやれる方はいらっしゃるのでしょうか。

池ノ谷さん:これまで、このようなことを担当するのは私一人だったのですが、新たに事務総合職の社員を採用しました。今後は一緒にやることで、新しく入社する社員にも社長の思いを理解してもらいたいと考えています。今年1年かけて、自分の分身を育てたいと思っています。

― 先ほど、本当は従業員同士で交流を密にしてほしいということをおっしゃっていましたよね。その従業員同士の自発的な交流の仕掛けづくりに入られようとしているのかなと感じました。

石川さん:そうですね。そうなっていかないとダメなんだろうなと思います。どこまでやっても、やっぱり社員が深くかかわる風土を作らないと、ただ、認証取るだけでは意味が薄いのかなと思います。

― それがうまく従業員の皆さんに伝わっていくといいですね。

石川さん:中小企業にはありがちですが、会社の内外にうまく伝えるのが難しいというのを実感します。弊社では、ここ4、5年前から健康経営優良法人の認定取得に限らず、様々な認定制度を取得し始めています。闇雲に努力してもなかなか理解されにくいのですが、認証認定があることでサッと伝わる部分もありますね。私がこの会社に対してやりたいことを認証を取ることで実現できるので、社員にすごく伝えやすくなりました。

― 新卒の親御さんや、おそらく従業員の皆さんのご家族にもわかりやすかったりしますよね。
ある企業では、取得をご家族にアピールすることで家族への気遣いが伝わっている事例もあります。

石川さん:すごくそれは大事だと思います。実は次の計画として、給料袋の中に会社の情報を入れてお届けすることを考えています。ご家族からの支援がないと、会社としても健康面に配慮する施策の成果が出にくかったりしますから。従業員のご家族への発信は、今とても重要視しています。

― 今日は、石川さんが経営者として苦労する部分に率先して取り組まれていることをお伺いできて素敵だなと思いました。そこに池ノ谷さんの理解があって、いいパートナーだなと感じています。
今後の展開として、新たに入社されるの社員さんもこの取り組みに尽力されるということで、御社の健康経営がより発展していく予感がしております。

<企業データ>

会社名:株式会社東京すずらん
事業内容:レンタルおしぼり 業務用雑貨販売
所在地:〒335-0005 埼玉県蕨市錦町2-3-1
資本金:5,000万円
従業員数:70人

[メンタルヘルス対策としてのマインドフルネス実践セミナー]動画紹介

健康経営、メンタルヘルス対策として、社員向けマインドフルネスセミナーが開催されました。このセミナーは健康経営優良法人認定やストレスチェックの対策の実践事例という位置づけで構成されています。これらの対策としてのマインドフルネスセミナーの様子を動画でご覧ください。

社内向けマインドフルネスセミナーの動画紹介

健康経営、メンタルヘルス対策として、株式会社セルメスタの社員向けマインドフルネスセミナーが開催されました。このセミナーは健康経営優良法人認定の「ヘルスリテラシーの向上」や「職場の活性化」の実践事例という位置づけで構成されています。また、事業主に実施が義務付けられているストレスチェックの対策では、従業員のストレス耐性を高め自らがストレスの抑制すること(セルフケア)が重要とされています。

マインドフルネスはグーグルなどの米国IT企業の社員研修で採用されて非常に有名になりましたが、今回ご紹介するマインドフルネスセミナーは、上述の健康経営優良法人認定の認定項目やメンタルヘルス対策の目的だけでなく、生産性、創造力の向上にも役立つ構成になっているのが特徴です。
自転車の運転の仕方を知っているのと、実際に自転車を運転できるのと異なるように、マインドフルネスの効果ややり方を知っていても、自分自身がそのメリットを享受できるにはマインドフルネスを実践し、習慣化させることです。

本セミナーは、マインドフルネスの効果を紹介すると同時に、やり方を体験してもらうマインドフルネスへの導入の位置づけになっています。

↓↓本セミナーのレポートをチェック!↓↓

<企業データ>

会社名:株式会社 セルメスタ(Selmesta CO.,LTD.)
事業内容:1.一般用医薬品、救急医薬品セット、介護用品、防災用品、健康食品の販売
     2.郵送検診事業の受託
     3.郵送検診キットの販売
     4.インターネットを利用した各種情報提供サービス及び販売
     5.医療費抑制事業
     6.不動産管理事務の受託
所在地:〒130-8671 東京都墨田区石原4丁目25番12号
資本金:9,900万円
従業員数:約60名

ストレスチェックにおける、勘違いしやすいポイント・方法

「ストレスチェック制度」が施行されましたが、その概要や方法については曖昧な理解で留まっていることが多いようです。なかでも、「ストレスチェックの対象者範囲」や、「ストレスチェックはうつ病チェックではないこと」など、誤解されがちな点についてまとめました。

定期検診と一緒ではない! ストレスチェックの対象者はどこまで?

ストレスチェックの対象者は、正社員だけではありません。また、当初の方針では「一般定期健康診断と同様」とされていましたが、現行では変更されているので注意が必要です。

厚生労働省が出している「ストレスチェック制度関係Q&A」では、ストレスチェックの対象者を下記のように定めています。

Q0-13
ストレスチェックの実施義務の対象は、「常時50人以上の労働者を使用する事業場」とされていますが、この50人は、どこまで含めてカウントする必要があるのでしょうか。アルバイトやパート労働者も含めるのでしょうか。

出典 http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150507-2.pdf


労働安全衛生法第66条の10に基づくストレスチェックは、労働安全衛生法施行令第5条に示す「常時50人以上の労働者を使用する事業場」に実施義務が課されています。この場合の「常時使用している労働者が50人以上いるかどうか」の判断は、ストレスチェックの対象者のように、契約期間(1年以上)や週の労働時間(通常の労働者の4分の3以上)をもとに判断するのではなく、常態として使用しているかどうかで判断することになります。
したがって、例えば週1回しか出勤しないようなアルバイトやパート労働者であっても、継続して雇用し、常態として使用している状態であれば、常時使用している労働者として50人のカウントに含めていただく必要があります。

出典 http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150507-2.pdf

<引用>厚生労働省「ストレスチェック制度関係Q&A」

ストレスチェックの対象者は「常時使用している労働者」で、「常時使用している労働者」とは、週1回でも月1回でも「継続して雇用し、状態として使用している」者を指します。
社長や役員は労働者ではなく使用者であるため、対象には含まれません。

派遣労働者の受検について

派遣労働者については、

派遣労働者に対するストレスチェック、医師による面接指導、就業上の措置等については、派遣元事業者に実施義務があります。一方、派遣労働者を含めた集団ごとの集計・分析は、派遣先事業者が実施すべきとされています。

出典 http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150507-1.pdf

<引用>厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」

となっており、ストレスチェックを実施するのは派遣元で、受検した派遣労働者を含めた集計・分析は派遣先と責務が分かれています。

ストレスチェックの「受検」は義務ではない

ストレスチェックは「常時 50 人以上の労働者を使用する事業場」に実施義務がありますが、ストレスチェックを受検する・しない、面接指導を受ける・受けないは、従業員の任意です。

企業は「左遷や解雇の理由にされるのではないか」「プライバシーが守られるか不安」など、従業員の心配事を払拭し、また同時に、受検しないことや面接指導を受けないことについても、不利益が生じないことを正しく伝える必要があります。

従業員が安心して受検できる環境づくりの指針としては、厚生労働省の「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」が参考になるでしょう。

ストレスチェックは性格検査やうつ病検査ではない

ストレスチェックの目的は、メンタル不調を未然に防ぐ「一次予防」です。したがって、ストレスチェックは「性格検査」や「適性検査」、うつ病などのいわゆる「病気のあぶり出し」に使用することは不適当とされます。

ストレスチェックで使用する検査項目は、メンタルヘルス不調の一次予防という目的に適した項目を設定するべきです。厚生労働省では「職業性簡易ストレス調査票(57項目)」を提供し、使用を推奨しています。まずはこちらを使用することが実際的です。

ストレスチェックの個人結果を従事者が把握するには?

ストレスチェックの結果は、実施者(※)から受検者本人に通知されます。原則として個人のストレスチェック結果を事業者(企業)が把握したい場合は、受検者に結果が通知された後に、個別に同意をとる必要があります。

ここで留意したいのが、ストレスチェック実施前や、実施時のタイミングで同意を得ることはできないという点です。
ストレスチェックの基本的な流れはこちらの記事が参考になるでしょう。

また、受検者全員にまとめて同意を得ることや、同意した労働者だけを対象にストレスチェックを行うことは禁止されています。

ただし、面接指導の対象者が面接指導を受ける申し出をした場合には、個人のストレスチェック結果を企業へ提供することに同意したものとみなされます。

※ 実施者…医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(労働安全衛生法第66条10第1項)

職場のメンタルヘルス対策 ストレスチェックの検査項目3領域とは

メンタルヘルス不調の一次予防を目的として行われるストレスチェックは、厚生労働省が提供する調査票を利用するのが一般的です。独自で作成する場合も、必ず法定の3領域が検査項目に含まれていなくてはなりません。ストレスチェックに必要なこの3領域について、それぞれの役割を解説します。

ストレスチェックの質問内容を構成する、法定の3領域

ストレスチェックに使用する質問表は、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」、またはその簡易版(23項目)を利用するのが一般的です。

“「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイト”では、厚生労働省のストレスチェック質問表、ストレスチェックの受検、ストレスチェックの結果出力、集団分析等のできるプログラムを無料で配布しています。

また、各企業で独自の項目を作成することもできます。その際は、法定の3領域「A.仕事のストレス要因」「B.心身のストレス反応」「C.周囲のサポート」に関する項目を含む必要があります。

一般の企業が初めて導入するのであれば、推奨されている項目を利用するのが実際的です。もし外部機関に選定を依頼する場合は、厚生労働省が提供する「外部機関にストレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合のチェックリスト例(PDF)」を参考にするとよいでしょう。

「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」のイメージ(抜粋)

ストレスチェックの3領域「A.仕事のストレス要因」

厚生労働省のストレスチェック「職業性ストレス簡易調査票」において、「あなたの仕事について~」という文言ではじまるエリアです。ここでは「職場と仕事の状況=仕事上のストレス要因」の分析を行います。

設問項目は、仕事の量的な負担、仕事の質的な負担、身体的負担の度合い、仕事のコントロールができるか、スキルの活用度、職場の対人関係、職場環境、自分に合っているか、働きがいはあるか、のいずれかを問うものとなっています。

ストレスチェックの3領域「B.心身のストレス反応」

厚生労働省のストレスチェック「職業性ストレス簡易調査票」において、「最近1ヶ月間のあなたの状態について~」という文言ではじまるエリアです。ここでは「心身のコンディション(反応)」の分析を行います。

設問項目は、活気、イライラ度合い、疲労感、不安感、抑うつ感、身体の症状(愁訴)、のいずれかを問うものとなっています。

中には「体の節々が痛む」「腰が痛い」「動悸や息切れがする」というような肉体的な疲労を問う項目もあります。これらの肉体的な疲労はメンタルヘルス不調に起因する可能性があるからです。

ストレスチェックの3領域「C.周囲のサポート」

厚生労働省のストレスチェック「職業性ストレス簡易調査票」において、「あなたの周りの方々について~」という文言ではじまるエリアです。ここでは上司や同僚、家族や友人といったサポート環境の有無をチェックします。

設問項目は、上司からのサポート、同僚からのサポート、家族や友人からのサポートのいずれかを問うものとなっています。

同じような職場環境であっても、周囲のサポートの有無によって、ストレスを感じる度合いは大きく変わるものです。また、職場内で気軽な話や相談ができない場合には、職場環境の改善に取り組む必要があります。

<監修医師>

近藤慎太郎 医師
日赤医療センター、亀田総合病院、クリントエグゼクリニックなどで診療に従事。

専門:消化器内科/消化管内視鏡/予防医学
経歴:北海道大学医学部・卒、東京大学医学部医学系大学院・卒。
日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター内視鏡室長を経て、現職。
資格:日本内科学会認定医/日本消化器内視鏡学会指導医/日本消化器病学会専門医/日本肝臓学会専門医/日本人間ドック学会専門医/日本医師会認定産業医/医学博士

ストレスチェックの流れと手順(厚生労働省 導入ガイド準拠)

ストレスチェック実施をスタートさせるとなれば、まずはおおまかな流れを把握し、ルールを定めなくてはなりません。厚生労働省からは導入マニュアルや質問表などのガイドが提供されています。本記事はそれら資料をもとに、流れや手順をおおまかに理解できるようまとめたものです。

ストレスチェックの実施手順、全体の流れ

平成27年から施工された「ストレスチェック制度」によって、従業員50人以上の事業場では、法律で定められたストレスチェックの実施が義務づけられています。

本記事では導入前の準備から高ストレス者への面接指導までのおおまかな流れを、厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」「ストレスチェック制度導入ガイド」に基づいて解説します。

出典:「ストレスチェック制度 導入マニュアル – 厚生労働省」

ストレスチェック導入前の準備

経営者によるストレスチェック実施の方針表明

ストレスチェックは、会社として「メンタルヘルス不調の未然防止のためにストレスチェック制度を実施する」旨を表明することからはじまります。
導入初年度は、会社の全体会議等の場で経営者が宣言する機会を設けるとよいでしょう。

衛生委員会等による、ストレスチェック実施方法等の話し合い

企業の衛生委員会等によって、ストレスチェックの実施方法等について話し合い、決まったことは社内規定として明文化、全ての労働者に知らせます。

ストレスチェック制度に関する社内規定には、特定の形式・書式はありません。厚生労働省が作成した「ストレスチェック制度実施規定(例)」を参考に、各社の実情に即して作成します。

話し合う必要がある項目(主なもの)
① ストレスチェックは誰に実施させるのか
② ストレスチェックはいつ実施するのか
③ どんな質問票を使ってストレスチェックを実施するのか
④ どんな基準でストレスの高い人を選ぶのか
⑤ 面接指導の申出は誰にすればよいのか
⑥ 面接指導はどの医師に依頼して実施するのか
⑦ 集団分析はどんな方法で行うのか
⑧ ストレスチェックの結果は誰が、どこに保存するのか

出典 http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/160331-1.pdf

<引用>厚生労働省「ストレスチェック制度導入ガイド」

ストレスチェックの実施

ストレスチェック調査票を配布、記入

ストレスチェックは「質問票」を用いて、用紙もしくはオンラインで従業員本人が回答します。一般健康診断で精神面について問診を行ったことをもって、ストレスチェックに代えることはできません。

“「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイト”では、ストレスチェック実施プログラムを無料で配布しています。

質問票は厚生労働省が提供する「職業性ストレス簡易質問票(57項目)」の利用が推奨されています。独自で作成する場合には、以下の3つの事項に関する質問を必ず含む必要があります。

①仕事のストレス要因:ストレスの原因に関する質問項目
②心身のストレス反応:ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目
③周囲のサポート:労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目

ストレスチェックによるストレス状況の評価・医師の面接指導の要否の判定

回収した質問票をもとに、ストレスの程度を評価します。
ストレスチェック結果の評価方法、基準は、実施者の提案・助言、衛生委員会における調査審議を経て、事業者が決定します。

第三者や人事権を持つ職員が、記入・入力の終わった質問票の内容を閲覧することはできません。

自覚症状が高い者や、自覚症状が一定程度あり、ストレスの原因や周囲のサポートの状況が著しく悪い者を高ストレス者として選びます。(ストレスチェック制度 導入マニュアル – 厚生労働省 より)

高ストレス者の選定は、下記2つの方法があります
① 質問票「心身のストレス反応」の点数が高い者
② 「心身のストレス反応」の点数が一定以上で、かつ「仕事のストレス要因」及び「周囲のサポート」の評価点数の合計が著しく高い者

詳しくは厚生労働省の「ストレスチェック制度実施マニュアル」の「ストレスの程度の評価方法及び高ストレス者の選定方法・基準(P38)」が参考になるでしょう。

本人にストレスチェック結果を通知

受検者にストレスチェックの結果を、封書または電子メールで通知します。また、高ストレス者には、面接指導の必要があることも連絡します。

原則として、個人の結果を事業者(企業)も把握したい場合には、各人への結果通知後に、個別に同意を得ておく必要があります。実施前や実施時での同意の取得、ならびに受検者全員にまとめて同意を取得することは禁止されています。

ストレスチェックの結果をもとに、高ストレス者に医師による面接指導

本人から面接指導の申し出

ストレスチェックの結果から、高ストレスと評価された受検者に対しては、医師等の実施者が面接の申し出の勧奨を行います。

受検者が事業者の窓口に面接を申し入れることで、医師による面接が行われます。面接指導を受けるかどうかは、勧奨を受けた受検者によるため、すべての対象者から面接の申し入れがあるわけではありません。

医師による面接指導の実施

面接指導を行う医師は精神科等の専門医である必要はなく、その事業場の産業医等が望ましいとされています。面接指導は申し出があってからおおむね1カ月以内に実施する必要があり、日時設定については対象者が指導を受けやすくなるよう配慮が必要です。

面接時に、医師は以下を確認した上で保健指導を行い、必要に応じて精神科・心療内科への受診の勧め、紹介等を行います。
① 当該従業員の勤務の状況
② 心理的な負担の状況
③ その他の心身の状況の確認

内容について医師から意見聴取、必要な就業上の措置を実施

高ストレス者の面接指導後、面談をした医師から就業上の措置に関する意見を、遅くとも1ヶ月以内に聴取します。事業者は、医師の意見を踏まえて、必要な就業上の措置を講じます。
必要に応じて、職場環境の改善に関する意見も求めるとよいでしょう。

ストレスチェックの集団分析(努力義務)

ストレスチェックの結果を職場や部署単位のグループで集計・分析することは、高ストレス者が多い部署を明らかにし、業務環境を改善するヒントになります。

集団ごとの集計・分析結果は、労働者の同意を取らなくても差し支えありません。ただし、単位が10人を下回る場合は個人特定につながりかねないため、労働者全員の同意が必要です。

義務化された「ストレスチェック制度」とは?

平成27年12月1日から従業員の「ストレスチェック制度」が施行され、これにより従業員数50人以上の事業場ではストレスチェックの実施が義務化しました。本記事はストレスチェック制度の大まかな理解を助けるため、概要、流れ、質問票や結果の例など、ストレスチェックの概要をまとめたものです。

ストレスチェックの概要

ストレスチェック制度は、ストレスによるメンタル不調を従業員にいち早く気づいてもらい、不調が顕在化するのを未然に防止することを目的としています。いわゆる「うつ病検査」「性格検査」「適性検査」といったものではないことに注意が必要です。

メンタルヘルスに対する意識を高めてもらうため、ストレスチェックの結果は本人にフィードバックされ、人事部をはじめとした会社は、本人の同意なしにはストレスチェックの結果は閲覧できません。

特に高いストレスがあるという判定が出た場合には医師面接の勧奨が行われ、本人の希望があった場合に面接指導が行われます。事業者は、医師の意見を踏まえて就業時間や異動などの対策を講じます。

ストレスチェックの3本柱

ストレスチェックは次の3つの要素で構成され、費用はすべて会社(事業者)が負担します。①と②が義務付けられているのは常用従業員が50人以上の事業所で、地方自治体や学校なども含まれます。

常時雇用していれば派遣労働者・臨時雇いに関係なく1年に1回以上のストレスチェックを受ける機会を設けなくてはなりません。「機会」と述べているのは、受検については従業員本人が選択するもので、会社が実施を強制することはできないためです。

① ストレスチェックの実施
② 高ストレス者を対象にした、医師による面接指導
③ ストレスチェック結果の集団分析(努力義務)

出典:「ストレスチェック制度 導入マニュアル – 厚生労働省」

ストレスチェック質問票の例

ストレスチェックは「質問票」を用いて、用紙またはインターネットなどを経由して、従業員本人が回答することで行います。

使用する質問票は厚生労働省が提供する「職業性ストレス簡易質問票(57項目)」が奨励されています。さらに簡素化した「職業性ストレス簡易質問票の簡略版(23項目)」を資料することもでき、どちらも厚生労働省のホームページからダウンロードできます。

また、質問票には独自の項目を選定することもできます。その際には、法定の3領域「1.仕事のストレス要因」「2.心身のストレス反応」「3.周囲のサポート」に関する項目がすべて含まれなければなりません。

出典:厚生労働省「ストレスチェック制度導入マニュアル」

ストレスチェックの結果「ストレスプロフィール」

個々のストレスチェックの結果は、実施者から受検者あてに封書または電子メールで直接通知され、事業者(会社)への通知はありません。

個人結果を事業者(会社)が把握したい場合は、原則として、各人への「結果通知の後」に、個別に同意を得ておく必要があります。「結果通知の前」や「実施時」に同意を取得することは禁じられているので、十分注意しましょう。

ストレスチェックの結果は、以下の3点について書かれています。
① 個人のストレスプロフィール(ストレスの特徴や傾向を図表等で示すもの)
② ストレスの程度(高ストレスに該当するか否かの判定)
③ 医師による面接指導の要否

“「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイト”では、厚生労働省のストレスチェック質問票、ストレスチェックの受検、ストレスチェックの結果出力、集団分析等のできるプログラムを無料で配布しています。

出典:厚生労働省「ストレスチェック制度導入マニュアル」