ヘルスケアIT セミナー12選:③IoTを活用した地方創生のチャレンジと失敗

会津若松市について

会津若松市は、福島県、西武の会津地域の中核都市の1つで、猪苗代湖磐梯山など自然豊かな位置にあり、鶴ヶ城白虎隊頭を始めとした、国内有数の観光産業を持ち、稲作を中心とした農業と酒漆器等の地場産業を持ちながら、IC関連の最先端産業IT関連産業の創設をおこなっています。

その中で、全国新酒鑑評会では福島県が金賞受賞数6年連続日本一を達成し、金賞受賞銘柄の半数以上が会津地方という特徴も持ち合わせており、また、日本初のICT専門大学で、先進のソフト、ハードウェアサイエンティスト養成を目的とした会津大学が平成5年に開学しております。

この様な背景を持った会津若松市ですが、人口は年々減っていき、現状の人口動態が今後も続いた合、2035年には人口が10万人を切り、2060年には6万5千人程度まで人口減少することが予測されています。

その際の高齢化率(65歳以上の人口割合)は42%に達し、現在の高齢化率である25%を大きく上回り、市全体としての活力を維持することは難しくなることが考えられるため、人口減少と超高齢化の双方について早急な対応が求められており、現在は、企業誘致や会津大学卒業生の市内就業等の推進による生産年齢人口増加と交流人口増加による押し上げを行い、人口10万人程度の維持を目指しております。

会津若松市の課題と方向性

かつて半導体生産業が盛んだったが、近年(リーマンショック以降)は、ファブレス・ファブライト化が進み、製造業の雇用創出力が低下した事や、会津大学への入学者数の約六割が県外からの流入であるが、卒業生の八割が県外へ就職してしまう事が大きな課題として挙げられるため

・会津大学というICT専門大学の存在
・基盤産業を発展の歴史的背景
・人口十二万人の人口規模いわゆる中都市
・豊富な自然エネルギーと第一次産業中心の産業構造
・少子高齢過疎等の課題先進

など、ICTを使った課題解決のためのリソースが充実している事などの特色を生かし、意味があるかどうかは分かりませんが、日本の1/1000の人口の街なので、1000倍の規模で取り組めば全国に通じるのではないか。という事を言い訳にしつつ、地方として典型的な課題があるので、ICTを活用した地方創生の実証地域として他の地域へ展開可能なモデル都市を目指しております。

会津大学では、コンピューターサイエンス領域で研究者数が100名と全国1位のICT研究を行っており、毎年240名が入学という小規模ながら、卒業生の就職率ほぼ100%を維持しております。

また、この様な地方創成をやろうと言った時に、世界的な企業をはじめ、多くの企業が集まってくださった事はとても大きかったと感じています。

実際の総合戦略の概要としては、長期的に10万人程度の安定人口の実現による地域の活力を目指しており、合計特殊出生率を2040年までに2.2まで上昇させること、2030年を目途に社会勤怠プラスマイナスゼロを目指す人口の流入促進と、流出抑制する事。
また、ICT技術、会津大学や観光を核とした交流人口の増加を図る事を目指しており、その為に以下の5つの基本戦略を核として、まち、ひと、しごとの調整をし、地域の豊かさを市民や本市を訪れた人々が実感できるまちを目指しています。

スマートシティ会津若松とは

健康や福祉教育防災エネルギー交通環境など様々な分野で情報通信技術ICTや環境技術を活用した取り組みを推進する事を目的とし、ICT関連産業の集積などにより新たな仕事雇用を創出し、産業復興を含めた地域活力の向上を図る事であったり、ICTを使って生活の利便性を高め、安心して快適に生活できるまちづくりを進める事や、バス路線の最適化、空き家の抽出などを行い、地図上への情報表示やセンサーで取得した情報を見えるようにし街づくりを行っております。

例えば、電気使用量の見える化を行い、2013年に100世帯に対してサービスを開始し、2016年には計600世帯まで提供しておりますし、実際に市内の電気使用量も下がった。と聞いています。
また、市役所が保有する情報をオープンデータとして公開していますし、出せる情報は極力出そうという方針なので、是非、ご活用ください。

GISの活用について

会津若松市の住民票上の住所を正確に取り込み、GIS(Geographic Information System)という、地理的位置を手がかりに、位置に関する情報を持ったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工し、視覚的に表示し、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術を使って、人口分布図を作っております。

図を見ると一目瞭然なのですが、この図の上に、高齢者一人暮らし、高齢者だけの世帯、いわゆる要援護高齢者を赤色で重ねたもの照らし合わせてみると、ほぼすべてのエリアにくまなく要援護の高齢者が居住していることが一目で分かったり、空き家がある事も確認する事ができます。

昔からの住所や長屋等においては、建物が異なるのに同じ住所といったケースがあり、住所だけでは正確な居住地を把握することが難しく、転入時に実際に住んでいる地点を確認しながら、職員が毎日データベースを更新完全な居住地データベースを整備維持しております。

また、住民ポイントとGIS上の住宅を付き合わせることで、「住宅かつ住人ポイント無し」の建物を、空き家の可能性が高いものとして抽出し、Googleストリートビュー上で巡回調査できるアプリを開発米必要に応じて現地調査も実施することで、現地への人員派遣調査に比べ時間及び人件費を大幅削減する事に成功しております。

市民との距離を埋める施策

ここに見える青い線がバス路線で、実際にバスを使うのは誰か。

これは、高齢者と高校生が殆どです。先ほどの住民ポイントで、どこに高校生・高齢者が住んでいるかが分かるので、効果的なバスの路線を組むことが可能になります。

実際に、バス会社の方と市で協力して運用ルートを変更しています。

この様に具体的な事を行っていくと、市の政策が自分の事に繋がってくる。という市民側の実感が得られるので、非常に効果的な施策かと思います。

具体的な変更につきましては、現状でのバス乗降データ等に基づき、バスの潜在需要を予測し、データに基づくバスの路線およびダイヤを最適化しております。

以前ですと、カンや経験、度胸による決定でしたが、データの見える化により、バス会社等と現状把握や問題意識を共有する事ができたのです。

また、オープンデータとして蓄積した、公用車位置情報GPS位置情報加速度情報と警察より、公開されている人身事故発生箇所情報とのマッシュアップを行うことで、潜在的な事故発生ポイントの検出も行うことが出来ています。

タブレット端末によるサービス事例

市民の「面倒を省く事」の大切さ

住民票を取りに行った時に、いちいち書くのが面倒だ。という時に、有効なサービスで、職員がタブレット端末を持って聞き取りをしながら受付をし(申請書記載不要。)、画面から署名を手入力することにより、印鑑も不要。また、発行までの待ち時間に年齢、地域時期に合わせて様々な行政情報をテロップ表示するなど、市民に優しいサービスの1つになっています。

実際に取得できる証明書については、以下の内容になります。
住民票の写し、印鑑登録証明書、戸籍事項証明書、戸籍の附票の交付申請(交付登録しているものに限る)

農業が進化する1つの形態

農業用ビニールハウスにセンサー途上日射温度や給水施肥装置を設置し、タブレット端末で操作する事を可能にしています。
実際には、土壌の見える化、情報収集、培養液の自動供給が可能になっています。、これらのシステムのメリットとしては

・農産物の収穫量と品質の安定化
・経験や勘を補完蓄積
・作業時間とコストの削減

などが挙げられます。
昔のいわゆる「農業」という形態とは違いますが、農作物を効率よく育てる事。という意味での収穫は可能になっていくのではないか。と思います。

「欲しい情報」が一目で。市民への気遣いとは

こちらのサイトが、具体的な事例になっています。

サービスごとのウェブページを持たない事が特徴になっており、市民等にとって、サイトを巡回する。という面倒な手間を省き、必要な地域情報をワンストップで取得を可能にしたのです。

個人の属性情報(年齢、性別、家族構成、趣味嗜好等)を踏まえ、その人にとって必要な情報をピックアップしてレコメンド表示する事で、自分専用のウェブページで必要な情報を会津若松プラスが積極的に提示しています。

これも、市民と行政地域とのコミュニケーション率の向上に貢献している1つの事例になります。

見える化で混乱を防ぐ

雪国ならではの視点になりますが、除雪車250台にGPS端末を搭載し、除雪車の運行状況を見える化したものになります。作業予測を公開する事で、除雪車の動きに踏まえた行動を取ることができ、平成27年から会津若松プラス上で公開を開始しております。

他にも、母子健康情報サービス母子手帳の電子化や、マイナンバーカードを利用した推し健康情報ポータルなども運用しております。

IoTヘルスケアプラットフォーム

ようやく本題に入っていきます。

そもそも、なぜこの様な取り組みをしてきたのか。という事ですが、日本の人口の問題と、高齢化が土台となっています。

国の人口は、2004年をピークに、今後100年間で100年前の水準に戻っていく事が予想され、1000年単位で見ても類を見ない極めて急激な減少を迎える。

その様な背景の中で、2050年には日本の総人口は3300万人減少し約25.5%減少 65歳以上の人口は約1200万人増加するのに対し、生産年齢人口(15から64歳)は約3500万人。若年人口(0~14)は約900万人減少する。その結果、高齢化率で見ればおよそ20%から40%へと高まっていきます。

つまり、日本の人口構成は他国に類を見ないスピードで少子高齢化が進行し、団塊の世代が全て75歳以上となる2025年には超高齢社会を迎え、社会保障費関係支出が増加する一方、支えとなる生産年齢人口は大幅に減少する見込のため、平成25年以降健康福祉部内各課のグループリーダーが定期的に集まり2025年問題と今後の対策を検討しかなえればならないのです。

その様な社会になり、65歳になってから健康を考えたのでは遅いだろう。という事で、特定健康診査がん検診の受診率向上への取り組みであったり、母子、若年層からの生活習慣病予防に向けた取り組みを行い、健康を推進していく働きを行っていかなければならないのです。

そんな中で、我々に出来ることは何か。と考えたときに、市民の生活の質を向上させる事や、医療介護費用の増大を抑制することを目指し、病気になる前から一次予防や二次予防を通じて健康を維持するための事業が必要だと考えたのです。

具体的には、生活習慣の見直しや環境の改善により病気を予防する事で、個人が行う健康管理など二次予防病気の早期発見や再発防止を通じて、健康被害を最小に食い止める事で病気の進行を抑制、予防し、健康維持を手伝っていく事になります。

マイナンバーの壁

これらを進めていく上で、健康情報の集約を行う為に、個人の健康情報は今、病院に行ってカルテだったり、薬をもらう処方箋だったり紙で受領されているので、健康情報の活用がされていない所から、健康情報を所有者へ還元し、健康情報の一元化、自らの健康維持のため、分析等により積極的な活用を図っていきたいのですが、正直、今の段階では出来ないのです。本当は、マイナンバーでやろうとしていたが、実質使えないので振出しに戻ってしまっている、という辛い状態にあります。

私たちは何とかして、1人の人に対してデータをまとめて見れるようにしていきたいのです。

例えば、個人が生まれてからどのような、予防接種を受け、どのように成長し、どのような診断を受け、どのような薬剤を飲んできたのかを把握分析する、それにより自分の健康状態の偏差値を知ることで健康づくりに繋げていきたい。という所。

そして最終的には、どの様な健康状態の人が、どの様な介護状態になるのか。

という所に辿り着く事を目指して進んでいるのです。ここに辿り着くことができれば、将来的に今の自分の健康状態は、どの位置にいて、どうなりそうなのか。

という事が見え易くなってくる可能性が高く、仮に、悪い方向に向かいそうだ。という事が分かれば、早めに何かしらの対策を打ちやすくなりますし、個人のデータをより有効に活用できる様になるのではないかと考えております。

プラットフォーム事業医療×IoT

また、この様な未来を構築していく為に、何をしたらいいか。という所で、個人情報を個人が管理することのできる基盤を構築していく事を考えております。

なぜなら、個人の意思で、健康データ個人情報を提供し、健康サービスを受ける事を可能にしたり、ウェアラブル端末やセンサー付きベッド薬箱等を活用する事で、健康データを自己申告ではなく客観的な視点で取得していく事が必要になってくると考えているからです。

また、拡張性のある今後様々なセンサー等が追加可能なプラットフォームを構築する事で、全国への展開可能性も考えており、治療から予防医療への移行で医療費削減し、会津発の革新的な健康サービス産業を創出する事を目指しているのです。

モニターの方に利用頂くサービスとは

モニターとして参加する市民は、最新の健康測定機器や健康維持に関するアプリケーション等のサービスを利用する事ができます。

例えば、スマートウォッチモニターが、スマートウォッチ腕時計上の健康測定機器を手首に装着することで、生体活動データ(心拍数、歩数、移動距離、消費カロリー)等を計算したり、スマートウォッチから取得した生体データや分析結果をBCA社のWebサイトで確認することができます。

その他にも、睡眠モニタリング機器として、ベッドにセンサーを取り付け、睡眠中のデータ(呼吸、体動、いびき等)をリアルタイムかつ自動で測定し、取得したデータはスマートフォンやパソコンで確認することができたり、薬箱に取り付けたセンサーが薬箱の開閉を感知し、開閉状況に応じて機器の表情が様々に変化することで、お薬やサプリメントの飲み忘れを知らせ、記録していきます。

実現を目指す新サービスの姿

デバイスから収集したデータを連携活用させることで、健康な市民に対しては意識の向上を。リスクの高い市民に対しては、専門機関との連携等による予防活動を促し、市民の健康維持に寄与する事ができます。

サービスイメージとしては、健康関連の様々なデータをもとに、市民の健康をリスクを分析していきます。

リスクが高い市民については視野病院、他の企業と連携して改善に向けたアドバイス指導を実施し、健康な市民に対してはインセンティブを付与することで、健康的な生活を維持してもらい、ヘルスケアプラットフォームの将来像を、健康医療情報の集約と活用法を軸にあらゆる健康情報を集約活用して、市民の健康意識を醸成すると共に、医療機関や薬局にも開放し、医療を介護のクオリティーの向上を目指しております。

また、スマートシティ会津若松における自治体国企業の関係会津大学と連携しながら、実証実験等に適した環境づくり人材育成受け入れ体制の整備等を行い、会津のみならず、日本全体への展開を見据えた課題解決モデルをつくり、企業や国にとって魅力ある地域になることがICT関連産業の集積地となるために会津若松市が取り組むべき役割だと私たちは考え、行動しております。

健康経営を支援する会員制度