【イベントレポート】IKIGAI企業×Z世代 公開リバースメンタリング「女性従業員の比率を高めるにはどうすればいい?(都築電気)」

『IKIGAIサミット in エシカルエキスポ2024 TOKYO』の中で開かれた公開リバースメンタリング。IKIGAI企業がZ世代に悩みや質問をぶつけることで、さらに魅力的な企業に進化してもらおうという画期的な企画です。今回は、都築電気の奥野洋子さんがアーティスト、インフルエンサー、大学生3人のZ世代にリバースメンタリングを受けました。

〔IKIGAI企業〕

奥野 洋子(都築電気株式会社 総務人事統括部ヘルスマネジメントチーム チームマネージャー)

{Z世代代表}

小崎 強(虹と満月と株式会社 Co-Creation Director)

RION(ODDLORE,KING RECORDS)

小川純璃(武蔵野大学4年)

熊倉 利和(IKIGAI WOKRS株式会社 代表取締役)

今井 遵 (司会)

1.働きやすい環境を伝えられていない

今井:まずは都築電気さんについて教えていただけますか。

奥野:はい。当社は創業92年のICT企業です。戦後、焼け野原となった日本に電話・通信設備を張り巡らせることで復興に貢献しようと名古屋から東京に進出。以後、流通・小売・不動産・公共など、幅広い業界のお客様をICTで支える企業として成長してきました。近年はDX、データサイエンス、AIなどの新しい分野にも力を入れています。

今井:そんな都築電気さんのお悩みは?

奥野:従業員の女性比率が少ないことです。2022年で言えば、女性従業員は14.5%、管理職に至ってはわずか2.2%に過ぎません。

今井:どうして女性従業員の割合が少ないんですか?

奥野:都築電気はもともと電話交換機の設置工事が祖業ですので、その流れで男性中心の会社でしたし、以前は残業もとても多かった。しかし、このままではいけないと近年は健康経営に力を入れ、D(ダイバーシティ)&I(インクルージョン)推進のプロジェクトチームも設け、多様な働き方を推し進めています。

今井:女性従業員が少ないことで困ることはありますか?

奥野:女性が少ないと特定の誰かがロールモデルにされてしまうことがあります。当社が目指しているのは一人ひとりの事情に寄り添う多彩な働き方。一律なモデルがあるのではなく、自分がどうなりたいのかという自律的なキャリアの開発に力を入れていますから、やはり女性はじめ、多様なバックグラウンド・属性を持つ方々に活躍してほしいと考えています。

今井:なるほど。健康経営やダイバーシティ&インクルージョンの成果は出ていますか?

奥野:そうですね。労働時間が削減され、有給休暇取得も2022年で16.6日でした。男性の育児休業取得率も6割近くになっており、2023年に「えるぼし認定」(※)も受けることができました。

また今年から「育休等職場応援祝金」の支給も開始しました。これは従業員の産休・育休期間にその人の業務をフォローしてくれた人に支給するもの。会社全体で出産や育児を祝い、支えあえる風土の醸成を目的としています。そのほかにも好きなメニューを自分で選べる福利厚生予算として、一人当たり年間3万円分が支給されており、メニューの中から「身だしなみ補助」を選択すれば、スーツや破れやすいストッキングの購入代などに充てることができます。

RION:今の奥野さんのお話を聞くとまさに至れり尽くせり。女性も働きやすい環境が整っていますよね。

小川:本当にそう。学生にも刺さる魅力的な取り組みをたくさんしているのに、それをうまく伝えられていないだけだと思います。例えば、ダイバーシティ&インクルージョンと言われても学生にはよくわからないですし……。

奥野:そうですよね。例えば、文系女子に刺さるのは何だと思いますか?

小川:私も文系女子ですが、周りの子たちを見てもやはり福利厚生の部分は重視していると思います。

小崎:それと御社のホームページを拝見すると、文字が多いと感じます。もっとパッと見てイメージできるもののほうが学生にもアピールできるのではないでしょうか。

奥野:そうなんですよね。ただ、当社は業務内容が多岐に渡りますし、事業の形態もB to Bなので学生さんなどには簡単に伝えにくく、どうしても文字数は多くなってしまいます。それも悩みの種なのですが、何か良い方法はありませんか?

小崎: 奥野さんがもっと表に出てSNSで会社を紹介するのはどうですか。「こんなに素敵な人が働いている会社なんだ」とイメージアップになりますし、新卒世代の女性も憧れを持つと思います。

奥野:ただ、当社は歴史の長い企業で真面目な社風なんですね。自分達で自分の会社をアピールすることにためらいがあり、SNSなどの情報発信もどうしても消極的になりがちなんです。

2.じゃあ、代わりに学生が発信しよう

今井:情報発信について Z世代の皆さんはどうすればいいと思いますか?

RION:従業員が自分の会社の良さを言いにくいのなら、代わりに学生が「こんなに魅力の詰まった会社がありますよ」と紹介すればいいのではないでしょうか。例えば、学生が御社を訪問し、会社紹介ツアーをするのもいいですよね。それだけでも全然違ってくると思います。

奥野:あっ、それいいですね! 今、会社紹介ツアーはお客様向けにはやっているのですが、確かに、学生さんが学生さんに向けて当社を紹介してくれるのはいいアイデアです。

今井:TikTokで仕事の1日の流れを紹介するのも流行っていますよね。

奥野:ああ、それもいいかも! 特にデータサイエンティストやAI、ゴリゴリの開発者などのエンジニアだと、パソコンの前にずっと座って黙々と仕事をしているイメージを持たれがちで、その人の気持ちや人間的な部分が伝わりにくいです。休憩時間の過ごし方とか、テレワークが終わった後、家族で食事をしたり、お子さんと遊んでいるシーンなどを入れると、どんなふうに1日を過ごしているのか当社で働く具体的なイメージを学生さんも浮かべやすくなると思います。

3.自分のパーパスを仕事を通じて実現

今井:これまで奥野さんはボトムアップで健康経営に取り組み、働き方改革を推進。残業時間の削減や働きやすい環境づくりに成功しましたが、なぜそれができたのでしょうか。 

奥野:一人ではとても無理でした。やはり仲間がいたからこそできたのだと思います。正直、最初の頃は「やって何の意味があるの?」といった反対の声も聞こえてきました。でも、その中でも「いいじゃない。やろうよ!」と言ってくれた人が経営陣も含め、いてくれたんです。

それと、個人的に過労死をするような人を絶対に出してはいけないという強い想いがありました。というのも、私は母を過労死で亡くしているんですね。母のような人をもう出したくない。そのためにも絶対に諦めるわけにはいかなかったんです。

今井:なるほど。そういう深い想いが奥野さんの中にあったのですね。逆にZ世代に対し、何かメッセージはありますか?

奥野:皆さんの未来は、可能性に満ちています。自分が周りの人のためにできることは何か、考えて行動し、自分のパーパスを仕事を通じて実現していただけると、とても嬉しいし、未来はもっと明るくなると思います。私が働きやすい環境づくりに力を入れてきたのは、その環境を活用し、仕事で自己実現ができる人を増やしたいからなんです。

今井:では、最後に奥野さんにとっての働きがいや目標について教えていただけますか?

奥野:私は「一瞬一生」という言葉が好きなんです。何か行動をした時、何かを成し遂げた時、嬉しいのは一瞬かもしれない。でも、やったことが誰かのためになっている。それを積み重ねながら一生やっていきたいと思っています。

【取材後記】

「女性従業員の比率を増やしたい」「せっかく働きやすい環境を作ったのにそれが伝わっていない」という奥野さんのお悩み。それに対し「学生が企業の代わりに魅力を伝えればいい」「学生による社内案内ツアーをするのも面白い」と提案するZ世代の回答に奥野さんも深く頷いていました。確かに視点や感性が近い学生が企業を紹介することで、より就活生の気持ちに響くコンテンツとなることでしょう。逆に奥野さんの仕事にかける想い、なぜ健康経営や働き方改革に力を入れてきたかについても聞け、Z世代にとっても有意義な時間となったようです。学生、企業で働く人の双方に深い気づきのあった公開リバースメンタリングとなりました。

(※)女性の活躍推進の状況などが優良な企業に対する厚生労働大臣による認定制度

会社名:都築電気株式会社

事業内容:ネットワークシステムおよび情報システムの設計、開発、施工、保守

所在地:東京都港区新橋6丁目19番15号(東京美術倶楽部ビル)

資本金:98億1,293万円

社員数:1,239名(2024年3月、単体)

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