【北浜グローバル経営】健康経営はマンパワーを高めるツール。自社で推進しながらクライアントに提案する

北浜グローバル経営は、中小企業の経営課題を解決する総合コンサルタント。自社で健康経営に取り組むとともに、クライアントにも健康経営の導入を提案しています。推進側、提案する側の両面から健康経営のメリットなどのお話を伺いました。(インタビュアー:健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表  熊倉 利和)

〔北浜グローバル経営株式会社〕

前井 宏之さん(代表取締役・弁理士)

1.自社で健康経営を推進し、顧客に提案

――まずは御社の事業内容を教えてください。 

前井さん:はい。中小企業向けの総合コンサルティングを行なっており、人財育成、マーケティング、補助金獲得、社内DX化などの支援をさせていただいています。

――何か一つの分野に特化するのではなく、中小企業の課題をトータルに解決するということですね。

前井さん:おっしゃる通りです。導入部分として補助金獲得やホームページ作成がありますが、お客様の経営全体のコンサルティングをさせていただくことが私たちの仕事です。ですので、いきなり「ホームページを作りましょう」「人財を育成しましょう」と言うのではなく、どのような会社にしていきたいのかというところから逆算した提案を行なっていきます。

例えば、「今より2割、売上を上げたい」というのであれば、売上は個数×単価で決まりますから、個数を増やすか単価を上げるかになります。2割多く個数を増やそうとなったら、そのための生産の仕組みや売る仕組みも必要になります。増えた分をどうやって売っていくかというと、「ホームページを作って広く商品をPRし、1割売上を増やしましょう」「もう1割は人を採用し、営業で売るようにしましょう。営業マンの育成をしましょう」という流れです。

――なるほど。補助金獲得支援にしても、あくまでとっかかりであって、メインとなるのはトータルな企業コンサルティングなのですね。健康経営もお客様に提案するサービスの一つになっているとお聞きしています。

前井さん:はい。健康経営は、マンパワーを高めるものですからコンサルタントにとってとてもいい商材です。例えば、営業担当者が疲弊し、体調不良で休む人が多いとなればマンパワーが足りなくなります。健康経営によって従業員の心身の状態が良好になり、パフォーマンスが高まれば、新しい人を入れなくても既存の人たちで売上をアップすることが可能になります。クライアントの人財採用を考えた場合もクライアントが健康経営をすることで「この会社は社員を大事にしている」「働きやすい環境がある」というイメージが伝わりますので応募者が増えます。これらは経営にとって大きなメリットです。

――コンサルタントとしてクライアントに健康経営の支援を行うだけでなく、御社自身でも健康経営を推進しています。3年前(2019年)に取材をさせていただいた時は、『睡眠』『食事』『運動』それぞれの専門家をお呼びしてセミナーやワークショップを開催。疲労度を測定してデータ化、可視化するなど先進的な取り組みをしていることをお聞きしました。

前井さん:はい。現在はコロナ禍ということで社員を一堂に集め、セミナーを開いたりすることは難しくなっていますが、健康経営は当社にとって欠かせないものです。というのもコンサルティングの仕事は人がいないと成り立たない。製造業などと違い、装置で製品を作るわけではありません。人がすべてです。社員の満足度や充実感を高めていくことが仕事の質を高めることになりますから、健康経営はとても重要です。

特に当社の健康経営のキーワードにもなっているのが睡眠、食事、運動。この3つを意識した生活をすることで生産性、創造性が向上します。そのことをデータで裏打ちし、健康経営が企業の成長に繋がることを可視化したいと考えています。それはお客様に健康経営を提案する際の説得材料にもなりますから。

――健康経営によって売上を上げることは御社自身にとっても言えることですね。御社の事業モデルと健康経営の相性はどうですか?

前井さん:非常に良いです。健康は、もともとその人が持っている能力を高めるパラメーター(変数)。中小企業の皆さんにサービスを提供する前に、自分達が先立って試してみて「これは使える」となったらお客様にも提案できます。当社自身のマンパワーを高めながらビジネスの商材となるものですから、相性は抜群だと言えます。

2.健康経営は会社のブランディングになる

――生産性や売上が上がるといったこと以外に健康経営を推進するメリットを感じていますか? 

前井さん:はい。やはり弊社の採用においても良い影響が出ています。採用面接をしていると、応募者の方から健康経営についての質問を受けることが多くありますし、どちらの会社にしようか迷った時、健康経営をしていることが入社の決め手にもなっているようです。

――確かに先ほど社員の方にインタビューをしましたら、4人のうち3人が『健康経営の広場』の御社のインタビュー記事を読んでくれていました。会社選びをする際、御社が健康経営を行なっていることが頭の中にあったようです。

前井さん: そうだったんですね。健康経営を推進することで入社希望者が増えるだけでなく、「自分が働いている会社は健康経営に力を入れている。社員を大切に考えている」ということが社員に伝われば、インナーブランディングにもなります。健康経営は外部へアピールするアウターブランディングと、社内に対するインナーブランディングの両方に役立つものです。

ブランディングと言えば、7月のオフィスの移転に合わせて会社のリブランディングに取り組んでいるところです。ホームページもリニューアルし、リクルーティングのページでは当社の健康経営についての取り組みも紹介したい。

実は、今日、何人かの社員が今度移転するオフィスの内覧に行ってきました。大阪駅の前にあるのですが、「とてもいいオフィスです。すごいです!」と彼らは興奮して戻ってきました。新しいオフィスに移転できるのも、社員の皆さんが頑張ってくれたお陰です。移転先は働く環境にとても配慮がなされており、健康経営にも役立つことでしょう。

3.ブルーオーシャン市場を開拓していく

――社員の方にお聞きすると、「まず何よりも人間性が大事」「お客様のために汗をかき、お客様のためになることだけを提案する」といった北浜スタイルと呼ばれる御社の経営理念、行動指針に共感し入社を決めたとおっしゃっていました。

前井さん:そうでしたか。採用の際、北浜スタイルについての資料を先に渡し、こういう考えで事業に取り組んでいる。こういう人を求めているといった採用基準について理解した上で面接に来てもらっています。ですから、仕事に対する考え方、想いはみんなで共有できていると思います。

――3年前に取材させていただいた時よりも社員の数もとても増えており驚きました。

前井さん:2019年ですと、おもに近畿圏のクライアントを支援していました。今ではクライアントをご紹介いただく提携先が約800社に増え、クライアントも近畿圏だけでなく首都圏や東海、中四国に広がりました。今ではグローバル経営が260名となりグループ全体では330名の規模です。

――それはすごい。かなりの投資ですね。そこまでして人財採用を行うのはなぜですか?

前井さん:私たちが手がけている中小企業に向けた総合コンサルティングは、実はブルーオーシャン。競争相手が少ない状態で大きな市場が広がっています。だからこそ、今のうちしっかりシェアを取っておきたい。

日本全国に提携先が広がり、支援依頼も、北海道から九州・沖縄まで、地方を含め全国から当社への支援依頼があります。また、補助金獲得支援などから総合コンサルティングの仕事に繋げていく体制も整いました。今だったらできますし、逆に言えば今しかできない。

この1、2年が勝負だと捉え、ギアをチェンジし、社員の数も増やしました。昨年5月に開設した東京事務所も今年4月に東京本社としました。2、3年後には、大阪本社と合わせてグループ全体で500名規模とし、さらに体制を充実させていきたいと考えています。

4.事業理念と人財のマッチング

――500名体制に向け、どんな人財を求めていますか? 例えば、大手コンサルティング会社で働いた経験のある人などでしょうか?

前井さん:実は、今、当社で働いてもらっている人は銀行などの金融業界や人材派遣などの異業種出身が多い。なぜ彼らが当社を選んでくれたかというと、金融だったら金融だけ、採用だったら採用だけの提案しかお客様にすることができません。仮にそれがお客様のためにならなくても、提案せざるを得ず、歯がゆい思いをしてきた人も少なくありません。

それが当社のような総合コンサルでしたら、幅広いサービスの中から今、お客様が本当に求めているもの、お客様の利益に繋がるものだけを提案することができます。そういった当社のビジネスモデル、北浜スタイルに魅力を感じ、ここで働きたいと思ってくれたようです。

――今後もたくさんの人を採用する必要があるとのことですが、求人方法は?

前井さん:はい。大手の人材紹介会社さんに専門の北浜チームを作っていただき、動いてもらっています。媒体ではなく、人材紹介による採用ですのでその分、成功報酬も高額になります。人材紹介の手数料は一般的に年収の30%程度ですが、今回は特にチームを組んで取り組んでもらっていますので、プラスαの金額を支払っています。

5.IPOより健康経営を選ぶ

――人財採用にも大変な費用がかかるとなると、それを賄うためにもIPOをお考えになりませんか? 

前井さん:いいえ。現時点ではIPOを考えずとも売上のみで進めていくことができています。もしデロイトやボストンコンサルティングのような会社になりたいとなったならば、その費用を捻出するためにIPOの必要性が出てくるかもしれません。

ただ、IPOをすると株主からの短期の売上アップなどの要望に応える必要も出てくるでしょうし、私たちは短期間の売上よりも、社員の成長を優先していきたい。ですから、自分達の中で資金も回し、北浜スタイルを守りながら事業を進めていきたいと考えています。

北浜スタイルで何が大事かと言えば、まずは人間性。優れた人間性があってこそ、人は成長すると考えています。株主の皆さんからしたら、社員の人間性など関係ない。まずは利益を出してくれということになるでしょうが、それは北浜スタイルではありません。ですから、IPOは私たちの考えとはどうしても相容れない部分が出てきてしまいます。それに「とにかく売上を上げろ」というやり方では、一時的に売上が上がっても長続きはしないでしょう。

「人間性が大事だ」など社会人にもなって何を青臭いことを言っているのかと思う人もいるかもしれません。ですが、言葉の力は不思議なもので、頻繁に社員に人間性や北浜スタイルの大切さを話していると、いつの間にかみんながそれを体現してくれるようになりますし、私自身にも影響があります。久しぶりに会う人には、「あれ、前井さん大分変わったね」と言われ、自分自身でも驚いています。

――優秀な人財を採用するため、あるいは優秀な人財に長く働いてもらうためにIPOではなく、健康経営に力を入れることを選ぶということですか?

前井さん:おっしゃる通りです。上場会社であるということに魅力を感じる人も多くいることでしょう。製造業などでしたら、上場することで最新の設備を導入できるなどのメリットも大きいでしょう。ですが、コンサルティング、特に当社のような考えで事業を進めている会社にとっては、IPOよりも健康経営の方がフィットします。

IPOのメリット(資金調達、知名度の向上など)を活用するよりも健康経営のメリット(従業員の成長、生産性向上)を優先し、北浜スタイルを守りながら事業を進めていくことを選びたいと思っています。

――コロナ禍で健康経営の取り組みが一旦、止まっている部分もあるとのことですが、それを再開しなくてもいいという選択肢はありますか?

前井さん:北浜スタイルを浸透させるための手段として健康経営があります。健康経営を推進することで北浜スタイルの理解が深まり、実行に繋がります。特に当社は急成長している段階。一人一人の社員の目標設定も高いですし、ストレスもあると思います。だからこそ、心のゆとりや仕事の満足感を得られる時間を多く作っておかないと社員は疲弊してしまいます。健康経営が今まで以上に重要になってくるでしょう。

【取材後記】

健康経営について多くの企業を取材していると、業種ごと、会社ごとに健康経営の活用法の違いを知ることができ、とても興味深く感じています。特に今回の北浜グローバル経営さんは、自社で推進する立場でもあり、クライアントに提案する立場でもあるという両面を持っています。そのため、様々な角度から健康経営について考えることができる絶好の機会ともなりました。会社の急成長を支えているのが北浜スタイルという理念であり、それを体現するための手段が健康経営であるというお話に深い感銘を覚える取材となりました。

<企業データ>

会社名:北浜グローバル経営株式会社

事業内容:各種補助金獲得支援・経営コンサルティング・人材育成研修の企画・実施・特定技能外国人の支援・事業承継、M&A支援・IT導入支援・HPや展示会等の各種ツール作成、マーケティング支援・健康経営支援・各種セミナーの企画・運営、組織運営の支援・知財戦略の立案、権利化支援・経営革新等支援機関業務

所在地:〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田1-13-1 大阪梅田ツインタワーズ・サウス 26F

従業員数:330名(グループ全体・2022年7月1日現在)

健康経営を支援する会員制度