【IKIGAI企業インタビュー】健康経営と地域貢献で誇りを持って働ける職場にし「人が幸せになる会社」を目指す(あっぷる保険事務所)

青森県五所川原市の保険代理店、あっぷる保険事務所さん。社員のメタボ率改善のため、敷地内にトレーニングジムを開設し、地域の方々にも開放しています。「地域貢献活動や伝統のまつりへの参加も大切」と語る阿部社長にお話を伺いました。(インタビュアー:健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表取締役  熊倉 利和)

〔有限会社あっぷる保険事務所〕

阿部 哲也さん(代表取締役)

榎本 美保さん(業務主任)

.保険の会社だからこそ、従業員も健康に

――まず健康経営を始めたきっかけを教えていただけますか。

阿部社長:毎年の健康診断で、従業員のメタボ率がなかなか改善されなかったことです。ここは都会とは違って、歩いて行ける範囲にすべてが揃っているわけではありません。特に冬場は寒さも厳しいため、近くのコンビニでも車を利用する土地柄です。そのうえ仕事もデスクワークが中心ですから、どうしても身体を動かす機会が少なくなってしまいます。

また当社では、取引先のお店から季節ごとにケーキを購入したり、お客様からお菓子をいただく機会も多く、ありがたいことではありますが、その反面、太りやすい環境になってしまいました。それで、なんとか健康を維持する方法を考えなくてはと思ったんです。保険屋たるもの自分自身が健康でいなければなりませんからね。

――なるほど。阿部社長ご自身は、もともと健康に対する意識は高かったのですか。

阿部社長:いいえ。ですが、10数年前に糖尿病で教育入院をして以降、健康に対する意識が変わりました。

あっぷる保険事務所は、昭和51年に私の父が開業した阿部保険事務所から始まった会社です。父はまったくお酒を飲まない人なので、お付き合いの席では父に代わっていつも私が飲んでいました。そういったことも病気の原因になったのかもしれません。

けれども教育入院を経験したおかげで、体調管理の仕方をしっかり学ぶことができました。また保険の仕事上も、自分の病気を引き合いに出して「病気があってもこういった保険に入れますよ」という話ができるようになったので、逆に武器になったとも考えています。

――そうだったんですね。退院後はどのようにして健康づくりに取り組んだのですか?

阿部社長:入院中は「食べたら歩く」と厳しく指導を受けたおかげで、1か月半で13キロ痩せました。退院したあとも、歩くことが習慣になっています。それまでつい車で行っていた郵便局も、コンビニも、歩いて行けるところは歩くようになりました。

――それは素晴らしい。会社全体の健康経営としてはどのようなことをしていますか。

榎本主任:毎朝8時55分から、全員でラジオ体操をしていますし、ミーティング後に、動画を見ながら軽い運動をすることも習慣になりました。

また、自治体主催のイベントにも積極的に参加しています。昨年は、ノルディックウォークというポールを使いながら歩くイベントに社内で希望者を募り、太宰治のゆかりの地をめぐりました。

阿部社長:その他にも、社に設置している自動販売機には、健康を意識した飲み物を中心に置いています。たとえば健康を推進するお茶や、トクホのコーラなどです。

また、2023年5月には、健康推進福利厚生施設として「あっぷるマッスル」というトレーニングジムを開設しました。

2.トレーニングジム「あっぷるマッスル」を開設

――ネーミングが素敵ですね!どのような経緯でトレーニングジムを作ったのですか。

阿部社長:私は学生時代にアメフトをやっており、そのころ住んでいた群馬の寮に個人的にベンチプレスなどを購入し、廊下に置いてトレーニングをしていました。

そして学生生活を終え、父が開業した保険事務所を継ぐことになった時、その器具をすべて地元に持ち帰ったのです。というのも、当時私は保険事業にあまり関心が無く、いつかトレーニングジムを作りたいと考えていたからです。

――その器具を用いて、社内にジムを開設したということですか。

阿部社長:はい。その他にも、友人から安く譲ってもらったランニングマシンやウォーキングマシンを設置しています。

ジムを開設したのは以前、交番だった建物。床がコンクリートですから重い器具の設置も安心です。もともとトイレもあり、ガスもあるので、休憩所としても使用すると同時に、昼食後などいつでも気軽に運動できるようにしています。

――それは最高の環境ですね。従業員の方々の反響はいかがですか。

榎本主任:開設してまだ1年経ちませんが、昼食後に自転車やウォーキングマシンを使用して「○キロ痩せました!」という人も出てきました。

阿部社長:従業員は仕事の後も保育園のお迎えや家のことなどで忙しく、なかなかトレーニングする時間がありません。だからこそ、昼ごはんの後に運動することが習慣になれば、健康維持に役立つと思います。

この施設は従業員のみならず、地域の方々にも開放しています。使用料は要りませんし、ぜひ、近隣の皆さまの健康維持にも役立てていただければと考えています。HPにも掲載しましたし、PRのためにジムの入口の看板と同じマスクマンのデザインTシャツも作りました。今後さらに、地域の方々にも使っていただきやすいように環境を整えていきます。

3.まつりへの参加を通じ、地域を支える

――まちおこしや地域貢献活動にも積極的に関わっているとお聞きしました。具体的にはどのようなことをされていますか。

阿部社長:五所川原には立佞武多(たちねぷた)という伝統のまつりがあります。これは青森市とも弘前市とも形式が違い、高さ20メートル以上、重さ19トンにも及ぶ巨大な立佞武多と、引き手、囃子方(はやしかた)、ハネトという踊り手が一緒になって練り歩くものです。

私は以前、囃子方の副会長を15年間務めた経験があり、立佞武多の館でボランティア活動もしていました。いまは商工会議所の常勤役員としてまつりの運営側を担うと同時に、観光協会に協力して運行班としても携わっています。まつりにはずっと関わっていきたいという思いです。

――まつりには、あっぷる保険事務所さんとしても参加していますか。

阿部社長:はい。企業ボランティアの引き手として、毎年参加しています。私から従業員に伝えているのは「あまり真面目にやるな」ということです。なぜなら、立佞武多は60人の息がぴったり合ってはじめて動くもの。一人で闇雲に力を入れても決して動きませんし、頑張りすぎてただ疲れるだけでは仕方ありません。息を合わせてみんなで引くこと、そして全員でまつりを盛り上げる心構えが大切です。

――会社経営にも通じる深いお話ですね。まつりへの地域企業の参加は多いのですか。

阿部社長:立佞武多の企業ボランティアも、以前は代理店会で広く行っていましたが、時代とともにまつりの参加企業も少なくなり、残念ながらいまでは当社の他1社だけとなりました。

けれども五所川原はまつり好きな土地柄ですから、当社は地域に根差した保険事務所として、まつりへの参加を大切に考えています。ジムの建物を囃子方のチームの練習場として使用したり、立佞武多や花火大会に企業協賛金の提供を行うのも同様です。今後も様々な形で貢献していこうと思います。

――地方の商工会議所ではメンバーの高齢化が進んだり、活動が小さくなっていることが多いと聞きますが、五所川原はいかがですか。

阿部社長:五所川原の商工会議所はいまの会頭が就任したとき、思い切った組織改編をしました。現在の常勤役員はほとんど50代前半へと若返りを果たし、60代以上の方々のバックアップ体制も整っていて、世代交代はうまくいっていると思います。

健康経営も、当社が始めた数年前まで、この地域ではまだあまり認知されていませんでした。しかし最近は、商工会議所の後押しもあって広く知られるようになり、取り組む会社が一気に増えてきています。

4. 「もつけ根性」で多くの人を笑顔に

――まつり以外でも地域貢献活動を何かされていますか。

阿部社長:毎年行っているのは、年に2回の清掃活動です。従業員みんなで赤いジャンパーを着て、当社前の通りでゴミ拾いをします。赤いジャンパーを着る理由は、津軽弁で言うと「もつけ根性」。これは「目立ちたがり屋」という意味ですが、清掃活動を通して地域の方々に、あっぷる保険を知ってもらい、親しみや信頼を感じていただけたらと思っています。

ただここ数年のコロナ禍では、これまで通りの活動ができませんでした。当時、私は「こういう時こそ何かしなければ」と居ても立っても居られない気持ちになり、知り合いから譲ってもらったカブトムシを100匹以上繁殖させて、近隣の保育園に寄贈する活動をしました。

――おお、それはおもしろい!なぜカブトムシの繁殖を行ったのですか。

阿部社長:コロナ禍では行動制限が多く、楽しいイベントも軒並み中止になる中で、子どもたちに少しでも喜んでもらいたかったのです。私はいつも、人がやらないことをしようと思っています。そのことで誰かを喜ばせることができたら本当に嬉しく思います。

ただ、これもHPに掲載してしっかりPRしていますから「もつけ根性」から来ているのかもしれません(笑)

――阿部社長は様々なことに果敢に取り組んでいますが、従業員の方々はどう思っているのですか。

榎本主任:どの取り組みでも、あっぷる保険を皆さまに知っていただくきっかけづくりになりますし、社長はそれを実際にビジネスにもつなげています。私たち従業員がどんどんチャレンジしようという気持ちでいられるのは、いつでも社長自身が先陣を切って盛り上げてくれるおかげです。

5. 働きやすさと働きがいを実現して「人が幸せになる会社」に

――大変なこともあると思いますが、なぜ様々な取り組みを続けているのですか。

阿部社長:保険事業は、型にはまった部分も多い仕事ですし、事故があった際には相手の方との交渉を行うなど、非常に神経も使います。ですから、私が保険事業以外の新しいことにチャレンジするようになったのは、ちょっと目先を変えて、気分転換したいという思いもありました。

けれども、保険の仕事とは別のものとして始めたことが、新しい発想につながったり、お客様との何気ない話のきっかけになったり、結果として保険の仕事に役立っています。

ですから、何にでも興味を持って行うことが大切です。人がやらないことであっても、世の中にさきがけて「いずれこうなりたい」ということに前向きに取り組んでいくことを心がけています。

――まつりや地域貢献の取り組みと健康経営も、直接的には関係がないようでいて、実際には深く関わっているように思います。

阿部社長:その通りだと思います。

当社が目指す理想の会社は「人が幸せになる会社」です。それを実現するために「社員満足」「お客様満足」「社会貢献」の3大基本方針を掲げているのですが、これら3つは関わりあって成り立ちます。仕事や社会貢献を通じて、お客様や地域の皆さまの役に立ち、信頼関係を築くことが、ひいては社員自身の誇りにつながります。

当社も健康経営優良法人に認定され、働きやすい環境は整いつつありますが、本当の意味で健やかに働きつづけるためには、そこからさらに踏み込んだ、働きがいのある職場を目指していかなくてはならないと考えています。

【取材後記】

阿部社長のお話にあったように、幸せに働くためには「働きがい」がとても重要です。社長自身が、従業員の方々が誇りを持ち、働きがいを感じられる職場づくりを率先して行っている姿が、とても素晴らしいと感じました。また、自社のトレーニングジムを地域に開放したり、まつりやイベントに積極的に参加することによって、地域コミュニティーの活性化にも大きな役割を果たしている姿に、地域に根差した企業の力を見た思いでした。

「働きやすさ」と「働きがい」の両立と地域貢献で「人が幸せになる会社」を目指すあっぷる保険事務所さんは、まさにIKIGAI企業であると強く感じさせられる取材となりました。

<企業データ>

会社名:有限会社あっぷる保険事務所

事業内容:損害保険代理業、生命保険の募集に関する業務、損害保険会社に対する特定証券業務(証券取引法65条の2第11項)の委託の幹施および支援、全各号に付帯する業務

所在地:〒037-0023 青森県五所川原市大字広田字柳沼3番地9

社員数:18名

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