【ホワイト企業オンライン座談会④】健康経営を推進するホワイト企業の新たな挑戦

健康経営の広場のシリーズ企画「大学生×ホワイト企業インタビュー」に登場の33社にお声かけをし、実施したオンライン座談会。4回にわけて開催された座談会の最終回となる今回は、大橋運輸様、ソフトウェアプロダクツ様、ボルテックスセイグン様、東陽電気工事様、シー・システム様、NSK様の6社、計7名が参加されました。

〔ホワイト企業〕

太 美善(大橋運輸株式会社 管理栄養士)

石川 寿子(株式会社ソフトウェアプロダクツ 管理グループ経営統括チーム)

佐藤 幸子(株式会社ボルテックスセイグン 健康管理室保健師)

石川 格子(東陽電気工事株式会社 代表取締役社長)

森下 亮佑(シー・システム株式会社 専務取締役)

菊地 公信(NSK株式会社 執行役員 本部長)

坂本 武治(NSK株式会社 企画総務部 人事担当)

〔司会進行〕

熊倉利和(健康経営の広場 編集長/IKIGAI WORKS代表取締役)

1.ストレスチェックは判定後の対応がカギ

熊倉:今回は全6社のホワイト企業の方々にお集まりいただきました。現在、どのような健康経営に取り組まれていますか?

森下:シー・システムの森下です。大阪にあるIT企業で、中小企業向けのシステム開発を行っています。

当社は、事業の一貫として健康経営を推進しています。その一つが、ストレスチェックサポートセンターの運営です。BtoBのこの事業は、社員の方々のストレスチェックを行ってデータを分析し、数値化して示すことで、その企業の課題を明らかにしていきます。健康経営の先には、生産性の向上があります。そこを見越しながら、自社においても、お客様の会社においても、健康経営を推進しています。

太:愛知県にある大橋運輸で、管理栄養士をしている太です。質問をいいですか。当社では、4年前からストレスチェックを行っています。その際、気になっているのが「アンケート形式では、高ストレスの判定が出ないように回答できてしまうのではないか」ということです。ストレスチェックの結果はどこまで正確性があるのでしょうか。

森下:ストレスチェックは、個人の結果の正確性よりも、組織全体の結果を通して、会社がいかに気づきを得るかが大切なステップと考えます。経営陣が現状を客観視し、社内環境を変えていけば、社員の方々のストレスも軽減される。個人の結果の良し悪しを見るだけでは、ストレスチェックが個人の問題で終わってしまいますが、会社全体をトータルで評価すると、健康経営の施策を考えていく土台にできます。

太:当社でも現在、メンタル不調者のケアと、メンタル不調者を出さないための取り組みに力を注いているので、評価をトータルで見るという視点がとても参考になりました。私たちも、ストレスチェックは判定が出たあとの対応が重要だと考えています。高ストレス者と判定が出た社員には案内を出し、産業医との面談をセッティングしています。また、社内環境の問題点を見落とさないよう、社長と産業医と私の3人で月に1回ミーティングを行うなど、常に情報交換ができる体制を整えています。

2.「参加率」「受診率」「禁煙率」をいかに上げるか

佐藤:ボルテックスセイグンの保険師の佐藤です。当社は本社を群馬県に置く運輸会社です。我が社の健康経営は、喫煙率の低下、肥満率の低下、再検査の受診率の向上を3本柱としています。トラックのドライバーは喫煙率が高く、肥満気味の人も多く、持病を持つ人もいるためです。また、昨年の10月には、群馬県が提供している、健康アプリを使ったウォーキングイベントに参加しました。

坂本:NSKの坂本です。当社は内装や電気通信工事をメインに行っている建設会社です。本社は東京にありますが、北海道から沖縄まで事業所を構えています。当社でもウォーキングイベントを行っています。強制ではなく自主参加にしているのですが、参加率が思っているようには上がりません。ボルテックスセイグンさんの参加率はどのくらいでしたか?

佐藤:第1回目ということもあり、半分くらいでした。健康アプリの必要性を感じていなかったり、ダウンロードできなかったりする人も多く、上長と連携して、アプリ入手のサポートを積極的に行い、なんとか半数の参加にこぎつけた感じです。豪華な景品を用意したところ、それを目的に参加した人もいました。

菊地:NSKの菊地です。ボルテックスセイグンさんでは、再検査の受診率の向上にも力を入れているとのことでした。再検査の受診率はどのくらいですか? 

佐藤:当社は100パーセントです。社長自身が健康経営に熱心で、トップダウンで再検査の受診を促しています。また、上長と私が連絡を取り合って、勤務時間内に再検査を受けられるよう調整しています。検査費用は自己負担ですが、社長の後押しのおかげで「再検査は受けるのが当たり前」という流れが社内にできています。

菊地:喫煙率低下に向けては、どんな取り組みをしていますか。

佐藤:私が作成した禁煙を促すチラシを喫煙所に貼っていますが、喫煙率に関しては「それでも吸いたいのならば仕方がない」というスタンスを取っています。もちろん受動喫煙対策は徹底して行っていますが、禁煙対策を無理に進めてしまうと、ドライバーさんから猛反発を受けそうです(笑)。

石川(格):そうですよね。東陽電気工事の石川です。当社は福島県にあり、主に電気工事を施工する会社です。ヘビースモーカーの人からタバコを取り上げると、体は健康になったとしても、イライラするなど精神的な障害が出てきます。そのため当社でも、本数を減らすことは促しても、禁煙を推し進めることはしていません。健康経営を継続していくには、「これは絶対にダメ」というよりも、ある程度のところは許容することも、ときには必要なのかなと感じています。

坂本:なるほど。健康経営にはゴールがないので、社員の理解を得ながら、いかに継続して取り組んでいくかを考える。とても参考になりました。

3.ウォーキングイベントと写真コンテストを同時開催

坂本:NSKが取り組んでいる健康経営の一つは、健康に関するオンライン研修です。産業医と保険師と打ち合わせをしながら、年2回行っています。また、仕事上、全社員に携帯電話を配布しているのですが、そこに健康アプリを入れています。当社では、そのアプリ会社が主催する企業対抗のウォーキングイベントに参加しています。参加は自主性に任せているため、参加率がなかなか上がらないと先ほどお話ししましたが、対策としては、インセンティブにポイントを付与しています。たとえば、1日5000歩で1ポイント、1万歩でさらに1ポイントなど。また、目標の体脂肪を達成したら1ポイント、食事の写真を撮れば1ポイントというように、健康増進の取り組みを細かく記録してもらい、それに対してポイントを出し、年末の賞与に加算するという仕組みをつくっています。

石川(寿):ソフトウェアプロダクツの石川です。その健康アプリの稼働率は、現状でどのくらいですか? 当社もウォーキングイベントにアプリを導入していますが、会社支給の携帯電話ではないためダウンロードを強制できず、会社が紹介するアプリがなかなか浸透していかないのが現状です。

坂本:当社は従業員数が約250人いますが、アプリを実際に動かしているのは200人近く、活発に使っているのが160~170人くらいです。

石川(寿):とても高い稼働率ですね。それにしても健康経営をポイント制にするとは、とてもおもしろい考えです。

太:大橋運輸も、大型連休の間にウォーキングイベントを開催しています。その際、写真コンテストも同時に行いました。外出した際に出合った、美しい自然やおいしい料理の写真などを撮影してもらい、投稿された作品はすべて各事業所に貼り出しました。従業員の投票によって順位を決定し、受賞者には豪華賞品を贈っています。単に「歩く」というだけでなく、撮影という目的を持って歩くと、自然と触れ合ったり、写真映えするお店を探したり、リフレッシュができます。しかも、掲載された写真を見ながら従業員同士の会話も弾み、ふだんは話さない人ともコミュニケーションのきっかけを得られ、とてもよい機会になりました。

佐藤:それはおもしろいですね! ウォーキングイベントの参加率が上がりそうです。ぜひ、真似をさせてください。

4.健康経営に地域を巻き込む

石川(寿):ソフトウェアプロダクツは、静岡県にあるIT企業で、設立が1967年になります。平均年齢がどんどん上がるなか、生活習慣病が悪化した、ヘルニアがひどくなって入院した、転んで骨折した、脳梗塞になったなど、従業員が次々に体を壊した時期があり、2015年頃に当時の社長(現会長)がトップダウンで健康経営を始めました。現在は、45歳以上の社員は会社負担で人間ドックを受けることができます。また、当社でも産業医や安全衛生委員会などと連携して、昨年度からストレスチェックを始めました。

石川(格):プログラマーの仕事は、毎日長時間パソコンを使うため、目の健康にも気を遣いそうですね。

石川(寿):そうなのです。正直なところ、目が心配な社員も多く、眼圧検査など、健康診断の項目にない特別な検査を追加したい社員には、3000円まで支給しています。

石川(格):人間ドックや追加検査の費用など、手厚くサポートされているのですね。

当社は社員が10人ほどの会社なので、健康経営に取り組みやすい反面、1人が健康を害すると数字がガクッと下がり、経営上も健康経営は重要です。そこで、私自身は健康経営を教えられる資格を取得しました。一方、社員に対しては、試行錯誤のうえ、健康経営という言葉を使わず、「気がついたら自然に健康によいことをしていた」という施策を考え、実施しています。たとえば、健康補助食品や健康飲料などの自動販売機を社内に設置するなどです。

なお、地域の企業さんたちを招いて健康経営の勉強会を開くなど、地域を巻き込んでいく活動にも取り組んでいます。

森下:健康経営という言葉を使わずに社員を自然に巻き込んでいく活動とは、とても素敵ですね。そういうアイデアはどこから出てくるのですか?

石川(格):当社は創業が昭和8年ですが、昔から「アイデアが浮かんだらまず試す。失敗したらやめればいい」という社内風土があり、新しいことに挑戦するハードルが低いことが大きいかもしれません。「おもしろい」と感じたことはまず試しています。

森下:地域の企業を巻き込む活動も素晴らしいですね。

石川(格):福島県という地域柄、中小企業が縮小していくなかで地域活性化の必要性をもともと感じていて、健康経営の情報を共有したらおもしろいなと感じたことがきっかけでした。最近では、SDGsのイベントを自社の敷地で開催したところ、初回で500人も地域の人たちが来てくれました。自分自身が楽しめる活動には人も自然とついてきてくれますし、活動も広がっていくと感じています。

熊倉:大橋運輸さんも地域を巻き込むのが上手ですよね。

太:当社は、社会福祉協議会と連携して、太極拳やバランスボール、ヨガなどの健康教室を地域の人たちを対象に無料で開催しています。これらは、当社の健康経営のノウハウを地域に還元していこうという社長の考えからスタートしました。最近は、資格や趣味を持つ地域の人に講師になってもらって、情報交換をする場を週に1回運営しています。警察の方に特殊詐欺について話してもらったこともあります。

熊倉:自社が取り組んでいる健康経営に、地域を巻き込んでいくというのは、今後、ホワイト企業の新たな形になっていきますね。「健康経営の広場」でもそのサポートやフェスの開催などを考案中です。その際には、ぜひご参加ください。本日はありがとうございました!

【取材後記】

健康経営に取り組んでいると、担当者の方々は壁にぶつかることが多くあります。問題点に気づいていても、解決策を導き出せないまま、時を過ごしてしまうこともあるでしょう。ですが、他社ではどんな施策を行っているのかと情報収集することで、何をどうするとよいのか、重要なヒントをつかめ、新たな挑戦のきっかけにできることが多々あります。今回のオンライン座談会でも、そんな場面が多く見られました。今後は、担当者交流会、女性交流会、経営者交流会という横のつながりをさらに重視したイベントを開催したいと、みなさんのお話を聞きながら、私自身も新たなチャレンジのヒントを得ることができました。

〈企業データ〉

会社名: 大橋運輸株式会社

事業内容:運送、引っ越し、生前整理、遺品整理など

所在地:愛知県瀬戸市西松山町2-260

資本金: 3,000万円

社員数: 99名

 

会社名: 株式会社ソフトウェアプロダクツ

事業内容:システム開発、ソフトウェア開発、ネットワーク構築など

所在地:静岡県浜松市東区長鶴町158-1

資本金: 5,225万円

社員数: 49名

 

会社名: 株式会社ボルテックスセイグン

事業内容:国際物流、運輸業、倉庫業など

所在地:群馬県安中市原市432番地

資本金: 9,000万円

社員数: 530名

 

会社名: 東陽電気工事株式会社

事業内容:電気設備工事、通信設備工事、消防設備工事など

所在地:福島県西白河郡西郷村字道南西85番地

資本金: 2,500万円

社員数: 11名

 

会社名: シー・システム株式会社

事業内容: システム開発事業、RPA事業、健康経営支援事業、AI事業部など

所在地:大阪府大阪市北区梅田2丁目5番6号 桜橋八千代ビル4階

資本金: 2,000万円

社員数: 24名

 

会社名: NSK株式会社

事業内容:電気通信工事、ネットワーク、監視カメラ内装設置など

所在地:東京都千代田区九段南2-3-1 青葉第一ビル

資本金: 1億円

社員数: 256名

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